新著紹介(TBLT)

大修館書店より間もなく共著書が出ます。名城大学の松村昌紀さん(『英語教育58の鍵』や『タスクを活用した英語授業のデザイン』を書いた、僕の尊敬する英語教育研究者)が中心になって5名で書いたタスク・ベースの言語指導(task-based language teaching: TBLT)に関する一冊です。

『タスク・ベースの英語指導:TBLTの理解と実践』(Amazon.co.jp

TBLTについては僕もあちこちで話をしてきましたが、本書はその理論的背景を解説し、小中高大それぞれの教育現場においてTBLTがどのような形で実現可能か、具体例を交えて紹介した一冊です。「タスク」を単なる活動の一種としてとらえるのではなく、シラバスやカリキュラムという大きな視野にたって授業の作り方を考えることを提案していますし、ある意味発想の転換をうながすことを目的としてもいます。

僕自身はほんの一部(第8章)を執筆したのみですが、全体を通してTBLTの理念が丁寧に語られているので、今までTBLTの理論に触れてこなかった方にもぜひ手に取っていただきたいと思っています。

詳しくは実際に読んでいただくのが一番ですが、本書の、いやTBLTの特徴は、帯にもある「教室外でも機能する英語使用者を育てるために」ということばによくあらわれています。「実用」とか「使える英語」と聞くとなんとなく薄っぺらいものを想像してしまうことも多いですが、本書の著者はみな「使える英語」がどのようなものなのかを真剣に考え、それを文章にしました。

奥付を見ると発行日は7月10日となっていますが、6月末には書店に並ぶようです。24日・25日に信州大学教育学部(長野市)で開催される中部地区英語教育学会の年次大会には著者全員が参加しますので、そこで直接話を聞いて、できればそのまま大修館のブースに行って注文してくれると嬉しいです。

この本については色々思うことがありますが、それについては別の機会に譲るとして、まずは出版のおしらせと宣伝をさせていただきました。

日英・英語教育学会第18回研究会

5月27日に広島大学で開催された日英・英語教育学会第18回研究会に講師としてお招きいただきました。残念ながら都合がつかず当日はビデオでの参加となりましたが、いつもどおりスライドを公開します。

講演資料ということで普段より文字が少なく、これだけ見てもよくわからない部分もあるとは思いますが、ご参考までということで。

Invited talk at IICEHawaii2017

This page is for my talk at IICEHawaii2017: The IAFOR International Conference on Education—Hawaii 2017, held on January 8–10 at Hawaii Convention Center (Honolulu, HI), titled:

Developing and implementing an English for Specific Purposes syllabus for business majors in Japan

Abstract:

English is a compulsory subject in secondary education in Japan, but most students, as well as teachers, do not have a clear goal for learning it because the number of people who actually need English in their lives is rather small. However, there is a certain demand for training of English for Specific Purposes (ESP) in such fields as engineering, medicine, and business, where communication in English is sometimes unavoidable. Such a demand is best accommodated at universities and colleges where the curriculum is set to help students develop skills to work in certain professions. In this talk I will first provide an overview of research and practice in ESP in Japan. I will then share my own experience as a teacher and curriculum developer at my workplace, where students learn English for business purposes.

Keynote slide:

Conference website:

http://iafor.org/conferences/iicehawaii2017/

(またまた)振りかえる

大晦日に1年を振りかえるのも今年で3年連続。さて、2016年はどんな感じだったでしょうか。

啓蒙的な活動

研究者としては致命的なぐらい書くことが嫌いな僕ですが、今年は共著で一冊本を出しました。詳しくは以下の記事をご参照ください。

本を書く

『はじめての英語教育研究』というタイトルで7月に出版しましたが、この本を出すきっかけとなった研究法セミナーは2005年に始まったので、本の完成まで11年かかったことになります。フルタイムの研究者として過ごしてきたのとほぼ同じ時間をかけたわけで、感慨深くもありますし、ひとつの区切りがついたとも感じています。

客員先で修士論文の指導をしていることもあり、研究法については折りに触れ説明する機会がありますが、これからは「『はじめての』を読んでおいて」と伝えることで済ませられると期待しています。

本といえば、もう一冊共著の本の執筆が進んでいます。こちらはタスク・ベースの言語指導(Task-based Language Teaching: TBLT)に関するもので、僕の貢献は微々たるものなのですが、この本が出ることに大きな意義があると思っています。これについては、編者も含めた共著者をうまいこと焚きつけることができた時点で僕の使命は果たせたとも言えるでしょう。現在鋭意編集中で、出版されるのは春ごろになる予定です。(僕の手柄ではありませんが)かなり突っ込んだ議論も展開されているので、多くの英語教育関係者のみなさんが手にとっていただけることを願っています。

TBLTについては、昨年の振りかえりでも書いたとおり、自分の研究資源を重点的に割り当てるつもりでいました。そういう意味でも本の形でまとめられることができることには満足です。ただ、まだまだ伝えたいことはたくさんあるし、特定目的のための英語教育(English for Specific Purposes: ESP)とTBLTの連携については特に力を入れたいと考えているので、2017年以降も、おそらくは数年という長めのスパンで取り組んでいくつもりです。このテーマに関する発表や講演を今年もいくつかやってきましたし(これとかこれ)、2017年にもあちこち出かけてESPとTBLTに関する話をする予定でいます(一番近いところでは再来週にハワイでこっそり話してきます)。

研究活動

研究というか、論文の執筆は今年も全然ダメでした。TBLTやESPのものも研究の一部ではありますが、一応主戦場と考えているのは第二言語の統語規則や形態素の習得なので、そちらについては今年の業績はほとんどありません、トホホ。新たな実験のラフなアイディアは用意できているので、来年はなんとかしたいところです。もっとも、上記の啓蒙活動とのリソースの奪い合いになるので、どう折り合いをつけるべきかよく考えないといけません。なんとなくもう一冊ブック・チャプターを書く話があった気がするのですが、今夜は思い出さないことにします。

ということで研究関連の執筆活動については昨年の課題をほぼすべて来年に持ち越すことになりました。書くことが嫌いで嫌いでしかたがないのですが、そんなことばかり言ってられないので、来年こそは少しでも手をつけねば。

おわりに

研究の他にもいろいろなことのあった1年でした。学内の業務も種類は多くないものの、ひとつひとつが重かったですし、来年度にはまたひとつ大きな仕事が待っています。教育の点では、来年度はじめて学部の演習(ゼミ)を担当します。こちらについてはゼロからのスタートなので、試行錯誤しながら何かおもしろいことをしかけられたらと思っています。

Eテレではマーラーの交響曲第8番の最後の最後を放送しています(ヤルヴィ指揮、N響)。3月に放送されるようなので楽しみにしましょう。ということでこの辺で。今年もお付き合いいただきありがとうございました。2017年がみなさんにとって素敵な年でありますよう。

card2017

KELES Seminar 38

このページは、関西英語教育学会第38回KELESセミナー@近畿大学・東大阪キャンパスの講演「はじめの一歩を踏み出すために:英語教育研究の入口」に関する資料の保管・公開場所です。

(10月1日午前9時ごろ少々の修正を加えたファイルに差し替えました)

投影資料(PDF)ダウンロード

話をする

ちょっと前後しますが、7月2日に神戸学院大学にお招きいただき、FD講演会という形で以下のタイトルでお話しさせていただきました:

目標言語を使った外国語の授業: 効果的なインプット・インタラクション・フィードバック

小規模なイベントでしたが、ディスカッションの時間も含めて2時間半たっぷりお話しさせていただきました。自分の研究に近い話ではありますが、英語教師としての自分を見つめるよい機会にもなりました。

今回の講演は、これまでに機会をいただいたいくつかの講演でお話しした内容を取りまとめたものでした。スライドを投影しながらそれぞれについて詳しく説明をしたので、スライドのみを公開してもあまり役に立たないような気もしますが、ファイル送付の依頼のあった先生にメールで送るにはちょっとサイズが大きいこともあり、ウェブで公開してしまいます。

PDFファイルのダウンロードはこちらから。

ことば足らずの内容ですので、質問などあれば遠慮なくご連絡ください。

本を書く

今回は自著の宣伝です。7月21日に研究社から『はじめての英語教育研究:押さえておきたいコツとポイント』という本が出ます。どんな内容かは書名がよく表していると思いますが、英語教育の世界でこれから研究を始めようという方が最初に手にする研究法の入門書という位置づけで執筆しました。

この業界には、『外国語教育研究ハンドブック:研究手法のより良い理解のために』(松柏社)という素晴らしい本があり、僕も大学院生など多くの方にお薦めしていますが、僕たちの書いた『はじめての』は、この『ハンドブック』よりさらに研究の入口に近い部分に重点を置いています。「なぜ研究をするのか」、「どのように研究テーマを決めるのか」、「何のために先行研究を読むのか」といった解説を通して、『はじめての』が、これからはじめて研究をしようとする方と『ハンドブック』との橋渡しになればと願っています。

2005年から2013年まで、中部地区英語教育学会で「英語教育研究法セミナー」を主催しました(セミナーは共著者の亘理陽一さんを中心に現在も続いています)。また、同じ学会で「英語教育研究法の過去・現在・未来」というプロジェクトも企画しました。本書は、こういったこれまでの取り組みの集大成という意味合いを持っています。

詳しい内容については書店等でぜひ手にとってご覧いただければと思いますが、「はじめに」の最後の段落だけここに紹介します。

本書の中でも繰り返し述べていますが、研究は他の研究との関係なしでは存在しえません。同様に、研究者も他の研究者とのネットワークがあってはじめて活躍できるのだと私たちは考えています。本書を手に取ったみなさんが、研究を通じて様々な形でつながり、英語教育研究全体を一歩前に進めてくれることを願っています。