Pinker (1991)
Pinker, S. (1991). Rules of language. Science, 253, 530-535.
以前に読んだものの読み直し。自分の博士論文とは別にここ2,3年扱っている規則形、不規則形形態素の習得の出発点となった論文。この論文自体は雑誌 Science に掲載されたもので、専門用語を使わずに平易に書いたものですが、わずか数ページにかなり濃い密度の情報&議論が紹介されています。
Pinker の主張をひとことでまとめれば、人間の持つ言語知識には rule-based なものと associative-memory-based なものが両方存在するということになりましょうか。例えば、walk/walked という屈折は、語幹 walk に過去を表す規則形の形態素 -(e)d を付けることによってその都度オンラインで行われるのに対して、run/ran という不規則形の場合、それぞれが別の語として脳に登録(記録?保存?”store” ってどのように訳されるのでしょう)されていて、さらにその2つが脳の中で結びついているとされています。僕の後者の説明はいかにもわかりにくいですが、コネクショニズムの理論による連合学習(associative learning)とほぼ同じものといえばいいのかな。Rule-based と associative-memory-based という2つのシステムが共存するという彼の主張は、Words and Rules (1999) に詳しいです。
上の主張の裏づけとして Pinker は、不規則形の形態素の処理のみがその語の頻度(frequency)や他の語との形式的な類似性(similarity)に影響を受け、規則形形態素の処理では頻度、類似性ともに影響を受けないとして、様々な関連研究に言及しています。これ以上詳しく書くと長くなりすぎるのでこの辺で終了。
大人の持つ母語の知識から、失語症や特定言語障害(SLI)の症例まで幅広く触れながら自説を展開しています。第二言語習得にも関連した研究があってもよさそうですが、ここ数年では V. Murphy ぐらいしか論文を出していないのがかえって不思議です。というわけで興味、関心を持ち続けているのですが、ハワイではこの分野で指導教官になってくれそうな人がいなかったので博士論文のテーマにはしませんでした。でも当分は追っかけたいトピックです。
