要旨
セミナー1-1 「よい研究」の条件と種類 (浦野 研)
英語教育に関わる研究を行うとき、まずはその研究を何のために行うのかを明確にする必要がある。その上で、その目的を達成するために適切な研究課題を設定し、さらにその課題に対して適切な研究手法を選択、決定することが重要である。本発表では、特に実証研究(何らかのデータ・情報を集めることによって研究課題に対して答えを導き出す研究)を中心に取り上げ、英語教育研究の文脈における「よい研究」の条件について具体例を交えながら提案する。同時に、研究の種類として考えられる主な手法を紹介し、研究立案の段階で研究課題にふさわしい研究手法の選び方についても議論したい。
セミナー1-2 研究論文の書き方・まとめ方 (田中武夫)
どのような研究であれ、最終的には研究論文の形にまとめることになる。この論文作成は、研究プロセスの最終段階とも言え、内容が優れた研究であっても最終段階の論文作成がまずければ良い研究にはならない。本発表では、英語教育に関する研究論文をどのようにまとめればよいのか、どのように研究論文を書くべきなのか基本的な事柄についてポイントを提示する。具体的には、(1) 研究論文によくあるケースにはどのようなものがあるのか、(2) 良い研究論文の規準とはどのようなものか、(3) 良い研究論文の構成とはどのようなものか、(4) 読者にとって読みやすい論文をどのようにして書けばよいのか、について、これまでの個人の経験や大学院等での指導経験をもとに、自分の反省をも含めて提示 することにする。
セミナー2A-1 実験研究をすすめるときに (酒井英樹)
実験研究を進めていくときに留意すべき点を、(1) 研究課題の設定、(2) 研究方法の決定、(3)データの処理、に関して提示する。具体的には次のような疑問が生じたときに、指針を得られるようにしたい。リスニングを研究してみたいが、テーマがなかなか絞れない、どうしたらよいか。先行研究を検索するためにはどんな方法があるのか。十分な先行研究が必要だと言われるけど、どんな先行研究が必要か。タスクについて研究しよう、でもタスクって何だろう、定義を押さえるためにはどうしたらよいか。論文を読むときに配慮すべき点はあるか。実験計画をたてるときにどんなことに注意したらよいのだろうか。統計処理を意識して計画しなさいといわれるけど、どう意識すればよいか。予備実験って何のためにやるのか。統計処理を行うときの注意点は何か。統計に関して、わかりやすい参考書はないか。これら、すべての疑問に、的確に答えを示せるわけではないが、自分の経験や大学院等での指導経験をもとに、参考となる情報を参加者と共有したい。
セミナー2A-2 調査研究をすすめるときに (本田勝久)
2002年4月の文部科学省初等中等局長通知『指導要録の改善』では、評価方法に関する改善が強く求められ、これまでのペーパーテストによる評価に偏ることのないよう、観察法や面接法、質問紙法や学習者の学習記録などの様々な手段の利用が提言されている。本発表では、これらの手段によって得られた資料を分析するための調査研究 (survey) を取り上げる。実験研究と同様に、調査研究を進める上での留意点を (1) 研究課題の設定、(2) 研究方法の決定、(3) データ処理に関してそれぞれ提示していく。データ処理については、相関研究 (correlational study) と質的研究 (qualitative study) によるカテゴリカルデータ分析を中心に論を展開していく。本年度は、昨年度の分析手法(χ2検定とウイルコクスンの順位和検定)とは異なった検定を取り上げる予定である。また、本発表で扱う調査研究とは、主に以下の2種類を意味するものとする。
1) 観察によるもの -- 「見ること」により学習者を理解しようとするもの
-- 観察法: 学習者の行動を観察・記録・分析し、行動の質的・量的特徴や行動の法則性を解明すること
2) 言語を媒介とするもの -- 「聞くこと」により学習者を理解しようとするもの
-- 質問紙法&面接法:行動そのものよりも学習者の感情や価値観・動機など、心の内面を理解すること
しかしながら、たとえデータ処理が優れていても「知りたいことが調べられなかったり」「無理な調査を行ったり」ということにならないために、できるだけ教室環境を考慮したリサーチ・デザインを取り上げたいと思っている。学習者をより多面的に理解し、これまで軽視されがちであった学習者の個人差を的確に把握するための調査研究になるように、参加者の方々とともに論議していきたい。
セミナー2B-1 p値の意味すること、しないこと (浦野 研)
実証研究のうち、何らかの数値をデータとして扱ういわゆる量的研究では、英語教育に関わる研究論文や学会発表においても、「p < .05」や「有意差が見られた」といった表現がよく使われる。また、研究を行う側も読む(聴く)側も、統計処理の過程を見ずにp値のみを確認し、それに基づいて結果の解釈・議論・批評を行うことが多い。ところが、実際の研究には被験者数 (sample size) が極端に少ないものや多いものがあり、p値だけを見て研究結果の解釈を行うことには問題がある。そこで本発表では、統計手法の中でも比較的イメージしやすいt検定と相関を用い、p値がどのように導き出され、それが何を意味して、何を意味しないのかを解説したい。主にp値と被験者数の関係に注目し、効果量 (effect size) や検定力 (power) といった概念を紹介しながら、被験者数が特に少ない(多い)ときの結果解釈における注意点や、先行研究の結果を比較・分析する方法(メタ分析)も紹介する。
セミナー2B-2 実例に見る、実証研究を行う上での注意点 (浦野 研)
本発表では、英語教育研究法セミナーでの他の発表内容を踏まえて、実証研究を行う上での注意点を具体例とともに検討・議論する。過去に発表された研究論文の実例を見ながら、研究を計画する段階で気をつけるべき点や研究中に犯しやすい間違い等を紹介することで、ある研究課題に対してどのような研究手法やデータ分析方法が利用可能か、そしてそのうちどれが最もふさわしいのかを議論する。これによって、研究法セミナーの内容をより実践的なものとして理解することを目標としたい。