要旨

セミナー1 研究テーマの見つけ方・深め方 (田中武夫)

どのように研究テーマを見つけ、どのようにテーマを深めていけばよいかという課題は、研究を行う者であれば誰もが直面する。研究テーマを見つけ深めるプロセスとしては、(1) 情報収集の段階(情報を収集する、情報を取捨選択する、情報を組み合せる)、(2) 絞り込みの段階(焦点を絞る、現状・課題・解決を見出す、論点を見つける)、(3) 思考整理の段階(考えを書き出してみる、仮説や問いをもつ、主張することを決める)などが考えられる。これまでの卒論指導や修論指導を通して気づいたことや、自分自身の反省などから感じていることをまとめ提示してみたい。

セミナー2 量的研究デザインの方法 (本田勝久)

英語教育の研究を行うとき、もし研究者が、実証主義的な視点 (positivist) に立てば、客観性、予測、反復可能性を重視し、科学的一般化や現象を説明する法則を明らかにすることが目的となる。そのため、実験研究や質問紙調査などの方法論 (methodology) を選択し、測定や選択式質問紙などの量的手法 (method) でデータを収集して、統計的な分析を行うことになる。

本発表では、具体的な研究テーマを例として、量的手法で研究を行う場合の研究デザインについて提示する。具体的には、(1)リサーチ・クエスチョンの設定、(2)データ収集の方法、(3)データ分析の方法、(4)研究の評価に関して、それぞれ提示していく。

また本年度は、統計的検定における検出力 (power) に基づくサンプルサイズの設計方法について触れる。検出力やサンプルサイズの設計は、統計的検定を行うにあたって基本的な概念であり、重要である。英語教育における量的手法では、自由度(n-1)のt分布の両側5%点より大きければ「有意差あり」と判定し、「帰無仮説を棄却して対立仮説が成り立っている」と判断することがある。しかし、検出力とサンプルサイズの関係を検討すれば、実質的な意味のある差について考察することができる。
 ・対立仮説が成り立っている→サンプルサイズ(大)、検出力(高)
 ・帰無仮説が成り立っている→サンプルサイズ(小)、検出力(低)

本発表では、正規分布、t分布、χ2分布、F分布の分布関数を計算できる(例えば、表計算ソフトExcelなどを使って)ことを想定している。統計的検定におけるサンプルサイズの設計では、検出力の考え方と計算方法が密接に関連している。サンプルサイズや検出力を検討することで、量的研究デザインの方法について議論したい。

セミナー3 質的研究デザインの方法 (髙木亜希子)

英語教育に関する研究を行うとき、研究者は、まずどのような理論的視点に立ち、研究を行うか明確にした上で、研究計画を立て、目的に合った研究手法を選択することが必要である。大きく分けて3つの理論的視点があるが、これまでの日本の英語教育の研究分野では、実証主義的な(positivist)視点に立った量的研究が主流であったので、本発表では、質的研究の方法論について理解が深めることを目的とする。

具体的には、解釈的な (interpretive)、および批判的 (critical) 視点に立った研究者のために、(1)研究課題の設定、(2)データ収集の方法、(3)データ分析の方法、(4)研究の評価という観点で、質的研究デザインの方法を提示する。質的研究の具体的方法として、ナラティブ研究、現象学的研究、エスノグラフィ、グラウンデッド・セオリー、事例研究など様々な方法論がある。前半は、全ての質的研究に共通する、研究対象者の選択方法、データ収集法、倫理的考慮及び量的研究の信頼性、妥当性に相当する質的研究の信頼性(credibility)、移転性(transferability)などについて概観する。後半は、昨年筆者が指導した修士課程の学生が行った事例研究をとりあげ、グループ面接、記述式質問紙などの質的手法によるデータの収集とコーディングとカテゴリー化を用いた分析方法を紹介する。

本発表では、量的研究の枠組みにおける量的データの補完としての質的データは取り扱わないが、今回提示するデータ収集と分析方法を応用することは可能である。具体的な事例を用いて、質的な研究方法を紹介することで、質的研究を行いたいと考えている人の理解を深めるとともに、既に質的研究を行っている参加者とは、質的研究のあり方や方法について意見を交換したい。