ハイブリッド授業事例報告 (1)

注:商品画像を借りるためにアマゾンのリンクを張りましたが、なぜかKindleへのリンクを張ったような挙動になってしまいリンクが使えません。お手数ですが各自おググりください。

2021年度の授業が間もなく始まります。僕の勤務先では教室定員の1/3以内に収まる授業については対面で、そうでない場合には非対面で実施することになっているので、最大でもひとクラス20名の僕はすべて対面で実施することになります。

昨年度第2学期(後期)も同じ方針だったため、僕はひと足早く対面に戻っていましたが、健康に不安を抱える学生や感染者の濃厚接触者として自宅待機を求められた学生などのために一部の授業をハイブリッド(ハイフレックス)形式で教えました。今学期も同じようなことが起こる可能性も十分あるので、ここで一度自分のやり方を整理しておきたいと思います。

教育環境

僕が担当しているのは、全学共通教育と経営学部の英語科目が中心で、その他にゼミがあります。基本的にすべて少人数の演習科目で、昨年度後期は最大で20名、最小で1名(4年生のゼミ)という感じでした。この記事で紹介するのはそのうちハイブリッド形式で行った英語の授業の様子です。

僕の授業はペアワークやグループワークが中心です。僕が前に立って話すのは活動の指示を出すときとクラス全体へのフィードバック、それとごくたまになんらかの解説をするときぐらいです(あ、他に雑談もあります)。ということで僕の行ったハイブリッド授業は講義中心の科目のそれとはだいぶ様子が異なるということをご理解ください。

僕が使った教室は、教卓にPCが1台設置され、プロジェクタおよびスクリーン、それにスピーカーが備え付けられています。教卓PCは有線で学内LANにつながっていて、その他に教員が利用できる無線LAN(Wi-Fi)があります。

昨年度は前期が丸々オンライン授業になったため、後期の始まる段階で学生たちは自宅でリアルタイムなオンライン授業を受ける環境をすでに確保できていました。具体的には、PCを利用したZoomへのアクセスと、Google ClassroomやGoogle Docs、それにGmailなどが利用できる環境です。Google ClassroomにはPCだけでなくスマートフォンからもアクセスできるようにして、教室での授業でもプリント類はスマートフォンで撮影してGoogle Classroomに提出するといったこともしていたので、同じことが自宅でもできる状態でした。

追加で持ち込んだ機材

ハイブリッド形式の授業に毎回持ち込むので、できるだけ機材は少なくコンパクトにということを心がけました。ハイブリッドのために用意したのは以下の4つです:

  1. MacBook
  2. MacBookを他の機器と接続するハブ
  3. ウェブカメラと三脚
  4. USBマイク(Blue Yeti)

1. MacBook

Zoom用です。USBハブがつながればなんでもよいのですが、メインとしては引退して出張用になっていた12インチMacBookを流用しました。軽くて薄いので教室に持っていくにはちょうどよいです。

2. USBハブ

MacBookにはUSB-C入力が1つあるだけなので、拡張する必要があります。携帯性を重視して外部電源を必要としないものを使っています。純正のものはありませんし、Appleがおすすめしているのはお高いのでSelore & S-Global社の10-in-1のものを買いました。プロジェクタに接続するためのHDMIとVGAがあって、USB3.0も3つまで挿せるので僕の用途にはちょうどよいです。複数の教室で使っていますが、HDMIの相性も問題ないです。

3. ウェブカメラと三脚

MacBookにはマイクもカメラも内蔵されていますが、後述する理由で長いケーブルを使って自由に移動させたいので外付け(USB接続)のものを使います。昨年は新型コロナ対策でリモート会議が盛んになり、ウェブカメラの入手が困難ですが、そんな中で最初に手に入れることができたのがロジクールのC922nでした。コンパクトで画質もよいですし、(授業では使いませんが)内蔵マイクの性能も悪くないので気に入ってます。

教室内でこれを自由に使うには、コンパクトな三脚が必要になります。机の上に置いて使うのでそれほど高さは必要ありませんが、ある程度の安定感と角度調整が柔軟なことが求められます。僕が使っているのはManfrottoのPIXIというミニ三脚とハクバの延長ポールHCS-2の組み合わせですが、はっきり言って最高です。

Manfrottoのミニ三脚は元々持っていたものを転用したのですが、とても良いのでもう1つ買い足しました。コンパクトなのにある程度重さがあって安定することと、雲台がとても優秀なところが気に入ってます。写真の赤いボタンを押している間雲台が自由に動くのですが、ボタンを離すとその位置でカッチリ固定されて動きません。これはたとえばC922nにおまけで付いてきた三脚とは全然違うところです。

ミニ三脚だけでは高さが足りないので延長ポールも用意しました。ハクバのものは値段も手頃で高さ調整も柔軟で気に入ってます。

以上3点を組み合わせるとこんな感じになります。ケーブルを引っ張らない限りはしっかり固定されて安定しています。

4. USBマイク

カメラと同様、マイクについても長いケーブルで移動させられるものを用意しました。僕が使ったマイクはBlueのYetiですが、これは自分の声を録音するために数年前に買ったものが手もとにあったからです。正直かなり大きくて重いので持ち運びにはおすすめできません。最近になって小型版のYeti nanoを購入したので、今学期はこちらを使うと思います。

僕の授業で使うマイクに必要な条件は、(1) ある程度きれいに声を拾ってくれることと、(2) 指向性の切り替えができることです。(1) はわかると思いますが、演習タイプのハイブリッド授業では (2) も重要になります。具体的には、単一指向(マイクの正面の音のみを拾う)と無指向(全方向の音を拾う)の切り替えができることが重要で、YetiもYeti nanoもこの条件を満たしています(そして音質もよいです)。実際の使い方は次の記事で紹介する予定です。

全部揃うと写真のようになります。ケーブルがごちゃごちゃしていますが、4点セットでA4サイズの手提げかばんに収まります。

機材紹介だけで随分長くなってしまったので今回はここまで。次回はハイブリッド授業での使い方を紹介します。

Zoom用マイクの音比較

オンライン授業や会議に明け暮れた2020年度ですが、来年度もZoomの出番は多そうです。ここから先オンライン講演の依頼なども入っているので、このタイミングで手もとにあるマイクの比較をしてみようと思います。

今回比較するのはこちらの5つです。簡単な紹介のほか、比較のために録音したサンプルも載せておきます。

  1. Logicool StreamCam
  2. Zoom H1n
  3. Blue Yeti nano
  4. RØDE Lavalier GO (w/ Wireless GO)
  5. RØDE Wireless GO

1. Logicool StreamCam

普段使っているウェブカメラです(この他に同じロジクールのC922nも併用しています)が、最近はずっとこちらに内蔵されたマイクを使っていました。最初のころは別途マイクを使っていましたが、カメラとマイクがセットになっているとケーブルがスッキリするし、音質もそこそこよいという理由です。

Zoomで使っている分には十分な音質だと思いますが、マイクとが距離もあるため周囲の環境音を広いがちかもしれません。

https://www.logicool.co.jp/ja-jp/product/streamcam

 

 

2. Zoom H1n

マイクというよりハンディ・レコーダーですね。写真のように立派なステレオマイクがついたポータブル録音機なのですが、USBケーブルを接続することでバスパワーの外部マイクとしても利用可能です。

ウェブカメラ内蔵のマイクと比べればかなりクリアな音質だと思います。最初に試したときは他のマイクより音量が小さかったので、以下のサンプルでは手動のダイヤルを最大値(10)にして収録しました。

https://zoomcorp.com/ja/jp/handheld-recorders/handheld-recorders/h1n-handy-recorder/

 

3. Blue Yeti nano

数年前に Blue Yeti を購入して以来愛用してきました。今年度も教室でハイブリッド(ハイフレックス)授業を行うときにはこのマイクを持ち込んでいましたが、かなり重くてかさばるのでコンパクトな nano を最近入手しました。

初代 Yeti よりはかなりコンパクトですが、ずっしりして安定感があります。音質もクリアで満足です。

https://www.bluemic.com/ja-jp/products/yeti-nano/

 

4. RØDE Lavalier GO (w/ Wireless GO)

こちらはいわゆるピンマイクで、襟元に取り付けます。3.5mmジャックがついているので直接接続することもできますが、PCにつなぐ場合にはTRS-TRRS変換アダプター(純正品だとSC4)が必要なので要注意です。

次に紹介する Wireless GO の子機に挿して使うことで、ワイヤレスで音声を収録できます。

マイクそのもののの質も高いようですが、何より口から近い位置に設置できるので環境音を拾わないのがよいです。顔や体を動かしてもマイクとの距離が一定なのも安定した音に貢献しているかもしれません。

https://ja.rode.com/microphones/lavaliergo

 

5. RØDE Wireless GO

Wireless GO には親機(写真右)と子機(左)があって、親機を3.5mm音声ケーブルでPCに接続し、子機を襟元等に付けて使います。子機には無指向性マイクが付いているため、これを襟元にクリップするだけでワイヤレスマイクとして使えます。音質もよいですし、コードレスなので取り回しが便利ですが、いくら軽いといってもそのまま取り付けるとちょっと気になります。上の Lavalier GO とセットで使うのがよさそうです。

http://ja.rode.com/wireless/wirelessgo

 

このように聴き比べると、やはりカメラ内臓のマイクは少し音質が劣るかなという印象です(それでもPC内蔵のマイクよりは断然よいですが)。手軽さと音質のトレードオフなので、インターネット環境で音質が変化するZoom等を利用したオンライン会議では手軽さを優先して内蔵マイクを使い、YouTubeに上げるような動画や音声収録では少しでも高音質を求めてUSBマイクやピンマイクを使うという感じになるでしょうか。個人的には Blue のマイクが気に入ってるので、椅子に座って使う場合にはこれの出番が多いかもしれません。Wireless GO/Lavalier GO は動きがあるときによいので、黒板の前で講義をするような場合によさそうです。ただ、僕は講義を担当していないのでそれほど出番はないかもしれません。

大学での授業の話をすると、僕は少人数の英語科目を中心に担当していて、グループワークのような活動が多いです。ハイブリッド(ハイフレックス)授業では、教室にいる学生と、Zoomで参加する学生をつなぐ必要があるので、教室の中央近くに無指向性のマイクを置くような使い方が多くなります。これまでは Blue Yeti を持ち込んで、3mのUSBケーブルでPCに接続してきましたが、来年度はひと回り小さな Yeti nano を使おうと思っています(Yeti nano も指向性を切り替えることができるのです)。自分には Lavalier GO を付けておいて、2つのマイクを併用するといったことも考えてみます。

最後に、ここで紹介した録音サンプルはZoomで収録しました。同条件にするために一度に収録し、ローカルに保存したm4a形式の音声ファイルをAudacityで切り出してmp3形式で保存したものです。音量等の調整は行っていません。

オンライン授業事例報告 (4)

これまでの記事:

あれよあれよという間に後期が始まり、今度は感染症対策に気を配りながらの対面授業に四苦八苦しています。そちらの話は日をあらためて行うことにして、前期のオンライン授業の内容についてもう少し振り返ります。

Google ClassroomとGoogle Docsを利用した(オンライン)共同ライティング

ライティングの授業では、これまでも2名または3名が協力してひとつの文章を書き上げるという活動を取り入れてきました。複数人で書くことで、ブレインストーミングやアウトラインの質が上がること、また話し合いながら書くことで、内容面だけでなく言語面についても意識化がうながされる場面が増えることなどが、共同ライティング活動を行う主な理由です(別途個別に書く活動も採用しています)。今回は共同ライティング活動をオンライン授業で実施した手順を紹介します。

Google Classroomでの設定

共同ライティングを行うだけなら、Google Classroomは必須ではなく、Google Docsだけでも実施可能です。ただ、他の活動も含めて成績管理を一括して行うなら、やはり Classroomも併用した方が便利です。

Google Classroomの基本的な使い方は省略しますが、共同ライティング活動では「課題(assignment)」機能を使います。課題機能を使うと、学生に何かを提出させることができます。個別で行うライティングの場合には、あらかじめ作成したテンプレートファイルを一斉に配布することで、統一されたスタイルやレイアウトの作文を集めることができて便利です。ただ、共同ライティングではここで少し工夫が必要です。

テンプレートファイルを用意するところまでは個別のライティング活動と同じですが、共同ライティングでは作成したファイルをペア・グループの数だけ複製し、それぞれ別のファイル名をつけておきます。僕はZoomのブレイクアウトルームを使ってグループワークを実施したので、ファイル名の末尾に Room 1, Room 2,… と部屋番号をつけておきました。すべてのファイルを課題に添付(アップロード)して、その際には「生徒が編集できる(Students can edit file)」ように設定しておきます。準備できた課題は下のスクリーンショットのようになります。

 

実際の授業では、Zoomを利用して課題の説明を行ってから、学生をブレイクアウトルームに分けます。学生はひとりひとりが自分の部屋番号に対応したファイルをブラウザで開きますが、複数人が同時に編集できるので、メンバーの誰もが同時に文章を入力することができます。話し合い自体はZoomを使って行い、作文はGoogle Docs上で進行します。グループによってはDocs上にアウトラインを作成するところもありました。

このやり方で共同ライティングを行うよい点は、ウェブブラウザで複数の学生が同時に利用できることに加え、ファイルが随時保存されるので保存や提出といった手間が不要なところ、さらに教員である僕自身も編集中のファイルを常時モニターできるところです。Zoomのブレイクアウトルームに入ることもできますが、入退室が手間ですし、複数の部屋に同時に入ることはできません(これは複数アカウントを使うことで回避できますが、そこまではしませんでした)。一方Google Docsのファイルについては、ブラウザで複数を同時に開くことができ、作文・編集の様子をリアルタイムでモニターすることができます。さらに必要があれば教員も指示やコメントを直接書き込むことができるため、適宜フィードバックを与えることも可能です。

評価とフィードバック

学生が作文をしている間にも必要があればフィードバックを与えますが、文章の内容や構成に注目してほしいのでこの段階では文法や語彙についてはあまり触れませんでした。そこで、課題提出(実際にはブラウザを閉じるだけなので「提出」というステップはありませんが)後に全体的なフィードバックを行いました。

個別のライティング課題については、iPadのGoogle Classroomアプリを利用すれば、Apple Pencilを使ってアプリ内で個々の作文に直接手書きで添削し、それをPDF形式で返却することができます。しかし、上で説明した共同ライティングのやり方ではそれができません。そこで、提出された作文をそれぞれPDFファイルに保存して、それをiPadで開いて添削する方法を採りました。添削には以前よりPDF Expertというアプリを利用していますが、他のアプリでもかまいません。

添削したPDFファイルはすべてをまとめてひとつのファイルにしてClassroomにアップロードしました。そうすることで学生たちは自分たちの書いた作文だけでなく、他のグループが書いたものとそれに対する教員のフィードバックを見ることができます。ただし成績(グループごとにA, B,Cをつけます)については公開せず、PDFに書き込まずに個別に返しました。

以上です。ここまでの方法は、Google Classroomを使わなくてもGoogle Docsだけで実現可能です。編集可能なファイルを複数用意して、それぞれのファイルのアクセス情報(URL)を各グループに伝えればOKです。

今回の内容は、Google ClassroomやGoogle Docsを使ったことがない方にはピンとこないかもしれませんが、一度触っていただくとイメージがわくと思います。

オンライン授業について最低限共有しようと思っていたものはこれですべてです。他にも細々といろんな工夫をしてきましたが、そちらについてはうまくまとめられそうであればまた紹介します。

オンライン授業事例報告 (3)

これまでの記事:

今回の投稿は、オンライン授業をどのように始めたのかについて紹介します。特に大学に入学したばかりの1年生を対象にした科目を例に、実質的に一度も対面せずにオンライン授業を軌道に乗せるまでのステップを振り返りたいと思います。ご参考までに、この授業は週2回開講なので、全部で15週30回の授業で構成されています。

授業開始前

僕が担当した1年次科目は学部の新入生全員が履修するもので、 授業開始前のガイダンス期間に対面で簡単なプレースメントテストを実施した上でクラス分けを行いました。プレースメントテストの場で、授業に関する重要なお知らせをメールで一斉配信するので確認するようにと伝え、第1回目の授業前に各自が担当教員にメールで自己紹介(英語)を送るという課題を用意しました。

自分の担当するクラス(実履修者17名)から自己紹介を受け取ったあとで、僕の方から案内メールを1通送りました。今後のコミュニケーションはLINEオープンチャットで行うことを伝えて登録を促し、自宅のITやWi-Fi環境を調査するためGoogleフォームで作成したアンケートへの回答を依頼しました。

さらに、授業は原則同期型(リアルタイム)で行うことも伝え、初回授業はLINEで行うので開始時刻までに待機しておくよう伝えました。授業開始までに17名がLINEオープンチャットに参加してくれていたので、初回授業は予定通りLINEにて行いました。

第1回授業

2回目以降はZoomを使う可能性を伝えてあったものの、1年生ということでひとりひとりがどのような環境にいるかすべてを把握しているとは思えなかったため、初回授業はLINEのみで実施しました。僕は自宅のメインPC(MacBook Air)にLINEアプリをインストールしてあるので、キーボードを使ったスムーズな文字入力が可能です。学生はおそらくみんなスマートフォンで参加していたと思います。

どんな感じで授業を始めたのかは、実際のログを見ていただくのが一番わかりやすいと思います。

この後は、提出してもらった自己紹介への全体的なフィードバックや、それに関する質問や意見交換をLINEで全員を交えて行いました。学生たちははじめてのオンライン授業、しかも書きことばでのリアルタイムなやり取りという形であったにも関わらず、積極的に意見を投稿してくれたので、予想していたよりも活発な授業になって僕自身ほっとしました。

第2回目以降

第2回目の授業もLINEを中心に進めました。出席確認後、宿題にしておいた修正版自己紹介への簡単なフィードバックを行い、それに続いてこちらでテーマを用意したいわゆるエッセイライティングの課題に取り組んでもらいました。そして授業の終わりにZoomの動作確認を行い、うまくいかない学生についてはメールやLINEでやりとりしながら授業外の時間も使って全員がZoomを利用できるところまで持っていきました。

第3回目の授業ではLINEを使ってGoogle Classroomの導入を行い、授業の後半でふたたびZoomの動作確認を行いました。そして第4回目からはZoomをメインに授業を進めましたが、授業開始時の挨拶と出席確認は引き続きLINEオープンチャットを使いました。Zoomについてはほぼ問題なく使えていましたが、Zoomへの接続がうまくいかない学生や時々落ちてしまう学生、さらに音声トラブルなどが発生することもあったので、LINEはそのバックアップの役割も果たしました。Zoomにもチャット機能がありますが、Zoomそのものに接続できないトラブルでは意味がないですし、あとになって振り返るためには保存したログを開かなければならないわけで、テキスト情報のやりとりはLINEに集約した方が便利でした。

ここまで2週間ほどの時間を使い、一度もグループとして集まることなしに無事オンラインでの授業環境を整えることができました。もっとも2週間ただ環境整備をしていたわけではなく、ライティングやリーディング課題も織り交ぜていたので、15週が終わったところでは昨年度と同じだけの授業内容をカバーすることができました。出席率と授業への参加状況も、対面だった昨年度までよりもむしろ高い状態が最後まで続き、特にエッセイライティングについてはここ数年担当したクラスの中では全体として一番よい成績だったのではないかと思います。

その他のクラス

前期に担当した1年次科目はこのひとつで、それ以外はすべて2年次以降の科目でした。2年生以上であれば、少なくとも大学のメールやポータルサイトの使い方は覚えているし、前年度までに僕の授業を取っている学生も多く、授業に絡んだLINEでのやりとりにも慣れていたので、1年次科目よりはずっとスムーズにオンライン授業を始めることができました。基本的にはメールやポータルを使って学生をLINEオープンチャットに招待し、そこでZoomに関する情報を伝え、初回からZoomで授業を行うことができました。

以上、対面なしでオンライン授業に入るために僕が踏んだステップを紹介しました。次回からはLINEとZoom以外のプラットフォームの利用方法について紹介したいと思います。

<第4回目の投稿はこちらです>

オンライン授業事例報告 (2)

これまでの記事:

第2回の投稿では、前期15週のオンライン授業で使った各種サービスを紹介します。細かい使い方は別の記事でお伝えすることにして、ここでは概要をお見せしようと思います。

すべての授業で共通して使ったもの

LINEオープンチャット

http://openchat-blog.line.me

学生との連絡用に5年ほど前からLINEを利用しています。それ以前はメールが主なコミュニケーション手段でしたが、LINEの方が圧倒的に反応が早いのですよね。学生が日常的に使っているからこそですが、そこにただ乗りさせてもらっている感じです。今年度は念のため事前にLINEの利用状況を調査しましたが、利用率100%だったので安心して委ねられました。

昨年度までは授業ごとにLINEグループを作成して使っていましたが、今年度はLINEオープンチャット(OC)を使っています。OCの利点は2つ。LINEグループの場合にはこちらで個別に学生を招待する必要がありましたが、OCではともだちになるというステップを省略して、招待用リンクやQRコードを使って学生が直接参加できます。同じ時期にのべ70-80人の学生を招待するので、OCの方がかなり便利でした。

もうひとつの利点は、OCに投稿されたものを後から参加した人も遡って閲覧できる点です。LINEグループの場合、全員向けの連絡は全員が参加してから行うか、新しい参加者が入るたびに同じ内容を投稿する必要がありますが、OCでは「はじめに」的な投稿を一度するだけで済みました。

授業時間内外合わせて、OCは学生とのコミュニケーションの主要チャンネルとして使ってきました。具体的な使い方は後日あらためて紹介します。

Zoom

https://zoom.us

Zoomはすべての授業でオンライン上の「教室」の役割を果たしました。Recurring meetingsを使い、授業ごとにユニークなmeeting IDを用意しました。こうすることで、学生たちには授業用URLを一度知らせるだけで毎回同じ部屋を利用できます。また、waiting roomも使わずに学生が僕より先にログインできるようにもしたので、本物の教室と同じように学生が好きな時間に入ってきて、授業開始を待つことができました。2年生のライティングのクラスでは、僕が入る前に雑談で盛り上がることが多かったようです。ただし、こういった運用が可能なのは履修者が少ない(今年度前期は最大で17名でした)からこそかもしれません。

すべての授業(ミーティング)は自動的にサーバーに保存される設定にして、さらにDropboxと連携することで自動的にローカル環境にも保存されるようにしました。録画したデータは基本的には公開しませんが、欠席した学生が僕の話を聞きたいという場合にその都度共有しました。

その他のサービス

Google系

僕の勤務先では、独自のLMSの他に数年前からGoogle Classroomが利用可能で、僕はライティングの課題提出などに使っていました。教職員や学生の使うメールもGoogle(Gmail)なので、シングルサインオンで各種サービスが利用できるのが魅力です。

Google Classroom (https://classroom.google.com) は、教材の提示と課題の提出、それにフィードバックも含めた成績評価の提示と保存のために利用しました。細かい使い方は授業ごとに異なりますが、毎回の授業を日付でラベル付けして、その日の教材や課題をまとめて時系列順に並べる使い方がシンプルでよかったと思います。

Gmail (https://gmail.com) は3年生のビジネス・ライティングの授業で使いました。ビジネスメールを書くことがテーマのこの授業で15年ほどずっと使ってきたので、そういう意味では新しさはありません。ビジネス・ライティングの実践例については、松村(2017)の第8章で少し紹介しているので、もしよろしければご覧ください。

https://www.taishukan.co.jp/book/b298105.html

Google Classroomと連動させて多用したのが Google Docs (https://docs.google.com) でした。Microsoft WordのGoogle版的位置づけですが、ブラウザで利用できること、自動保存されること、テンプレートの配布が簡単なこと、複数人で同時編集ができること、その様子を教員である僕も随時モニターできることなど、特にライティング授業で使うにはいいことづくめです。オンライン授業だけで使うのはもったいないですね。Google Docsを使った実践例も後日詳しく紹介します。

Google 系でもうひとつ利用したのがJamboard (https://jamboard.google.com) 。こちらは他のサービスほどは知られていませんが、ホワイトボードを共有するウェブサービスです。マーカーでの書き込みと付箋を使える程度のシンプルなものですが、グループワークではZoomに付いているホワイトボードの代わりにこちらを使いました。Googleの他のサービス同様ファイルが自動保存されること、複数人での同時編集がスムーズなこと、教員である僕も随時複数のボードをモニターできることなどが便利です。

Google以外のサービス

基本的にはこれまでに紹介したサービスが中心でしたが、授業によっては他のサービスを援用しました。

Flipgrid

https://flipgrid.com

学生のプレゼンテーションの提出場所として利用しました。スマートフォンの前で話すだけで完了するので手軽です。詳しい使い方はご要望があれば後日。

Canva

https://www.canva.com

ウェブベースのポスター作成アプリで、ポスター発表用のポスターを作成するために使いました。同じ用途でGoogle Slidesも用意しましたが、Canvaの方が洗練されたポスターが作れます。複数人で同時編集が可能です。

Slack

https://slack.com

2年生のライティングの授業で、教室外ライティング活動用に使っています。オンライン授業になる前から使ってきたので、今回特に新しくしたことはありません。Slackの利用方法についてはこちらの口頭発表資料の中で少しだけ紹介されています:

https://www.urano-ken.com/research/jasele2017/

以上です。次回は各授業の導入に焦点を当てて、主に第1回目の授業の進め方と、授業全体の流れについて紹介する予定です。

<第3回目の投稿はこちらです>

オンライン授業事例報告 (1)

僕の勤める北海学園大学でも間もなく後期が始まりますが、その前に、すべてオンラインで実施した前期の授業について今のうちにまとめておこうと思います。

僕は英語の教員で、いわゆる講義科目は担当していません。週6コマの英語科目の他にゼミを持っていますが、ここでは英語科目に絞って紹介します。

北海学園大学では、授業開始を当初の予定より1週間ほど遅らせて、すべての授業をオンラインで実施する形で今年度が始まりました。6月になって一部で対面授業が再開されましたが、経営学部は学部の判断で原則オンライン授業を前期終了まで続けました。

授業開始を1週間遅らせるとアナウンスのあった3月中旬には、少なくとも前期の授業はオンラインで実施される可能性があると考えて準備を始ました。最初に検討すべきは、時間割通りにリアルタイムで実施するか、時間に関する縛りのないオンデマンド型にするかでした。

リアルタイムorオンデマンド

英語教育の分野では、リアルタイム型の授業を同期型(synchronous)、オンデマンド型を非同期型(asynchronous)と呼びます。それぞれに利点・欠点がありますが、僕は原則すべての授業を同期型で実施することに決めました。理由は以下の通りです。

1. できる限り対面授業と同じものを提供したい

僕の授業では、多くの時間をペアワークやグループワークに使います。非同期型授業では、学生同士が直接やりとりをする活動を設定するのは(不可能ではないものの)現実的でないため、できれば同期型で行いたいと考えました。

2. 授業という生活リズムを維持したい

履修者の多い講義科目では、配信動画や配布資料を使って学生が自分のタイミングで勉強する非同期型授業が中心になることが予想されました。すべてが非同期型になると、学生が学生としての生活リズムを保つことが難しいだろうと考え、週に1つ、2つであっても時間割通りに開講することで、毎週同じ時間に同じメンバーが集合するという形を作りたいと考えました。

3. 授業以外の余白部分も経験してほしい

上で書いたことともつながりますが、去年までと同じような学生としての経験を継続して持ってほしいということを、特に1年生に対して強く思っていました。時間割通りに集合して挨拶をしたり、教員(僕)のちょっとした雑談を聞いたり、学生同士でもゆるく談笑する時間を確保したり、そういうことを意識して授業を進めました。詳しくはのちほど紹介しますが、僕の授業では主にZoomを利用して、ブレイクアウトルームに分かれて数名の学生同士でグループワークを多く行い、時にはブレイクアウトしたまま解散という日もありました。そういう時には時間の許す限りZoomを開放しておき、授業に関係ないことも含めて自由に雑談してくださいと言っておきました。特に1年生の授業では、終了後1時間以上残る学生もいて、どんな話をしていたか僕は知りませんが、対面授業に伴う授業以外の経験に近いものをオンライン環境でも提供できていたのではないかと思います。

使用するプラットフォーム

以上の理由で同期型授業を実施することに決め、次にどのプラットフォームを使うかの検討を行いました。できる限り対面授業に近い形での実施を考えたので、まずはビデオ会議システムの利用を前提とし、それができるかどうかを確認しました。

具体的には、自分のクラスの履修者が確定してすぐに全員に連絡し、自宅でのネットワーク環境および利用可能なIT機器(スマートフォン、タブレット、PC、プリンタ等)の調査をGoogleフォームを用いて実施しました。その結果、(少なくとも僕の授業を受ける学生の)全員が通信量(料)を気にせずインターネットを使える環境を持っていたため、ビデオ会議システムの利用を決めました。

利用するプラットフォームについては、Google Meet(大学でG Suiteを契約しているためこちらが推奨)、Zoom、Skype、Microsoft Teams、LINEビデオ通話などを検討し、同僚とオンライン会議をする中で画質・音質などの比較をしました。最終的にZoomの利用を決めたのは、画質・音質がよいように思えたこともありますが、ブレイクアウトルームという参加者をグループに分けてビデオ会議を行う機能を持っていることが決定的でした。

Zoomを3名以上で授業時間で利用するためには有償のアカウントが必要で、僕は自費で1年分の契約を行いました。出張がほとんどなくなることが予想されたため、授業以外にも研究会等で利用することが多いだろうという判断でした。実際現在でもかなりの頻度で利用しています。

第1回目の報告はこれで終わりです。次回はざっくりした授業の進め方について触れ、あわせてZoomと併用した他のオンラインサービスについて紹介する予定です。

<第2回目の投稿はこちらです>