オンライン授業事例報告 (4)

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あれよあれよという間に後期が始まり、今度は感染症対策に気を配りながらの対面授業に四苦八苦しています。そちらの話は日をあらためて行うことにして、前期のオンライン授業の内容についてもう少し振り返ります。

Google ClassroomとGoogle Docsを利用した(オンライン)共同ライティング

ライティングの授業では、これまでも2名または3名が協力してひとつの文章を書き上げるという活動を取り入れてきました。複数人で書くことで、ブレインストーミングやアウトラインの質が上がること、また話し合いながら書くことで、内容面だけでなく言語面についても意識化がうながされる場面が増えることなどが、共同ライティング活動を行う主な理由です(別途個別に書く活動も採用しています)。今回は共同ライティング活動をオンライン授業で実施した手順を紹介します。

Google Classroomでの設定

共同ライティングを行うだけなら、Google Classroomは必須ではなく、Google Docsだけでも実施可能です。ただ、他の活動も含めて成績管理を一括して行うなら、やはり Classroomも併用した方が便利です。

Google Classroomの基本的な使い方は省略しますが、共同ライティング活動では「課題(assignment)」機能を使います。課題機能を使うと、学生に何かを提出させることができます。個別で行うライティングの場合には、あらかじめ作成したテンプレートファイルを一斉に配布することで、統一されたスタイルやレイアウトの作文を集めることができて便利です。ただ、共同ライティングではここで少し工夫が必要です。

テンプレートファイルを用意するところまでは個別のライティング活動と同じですが、共同ライティングでは作成したファイルをペア・グループの数だけ複製し、それぞれ別のファイル名をつけておきます。僕はZoomのブレイクアウトルームを使ってグループワークを実施したので、ファイル名の末尾に Room 1, Room 2,… と部屋番号をつけておきました。すべてのファイルを課題に添付(アップロード)して、その際には「生徒が編集できる(Students can edit file)」ように設定しておきます。準備できた課題は下のスクリーンショットのようになります。

 

実際の授業では、Zoomを利用して課題の説明を行ってから、学生をブレイクアウトルームに分けます。学生はひとりひとりが自分の部屋番号に対応したファイルをブラウザで開きますが、複数人が同時に編集できるので、メンバーの誰もが同時に文章を入力することができます。話し合い自体はZoomを使って行い、作文はGoogle Docs上で進行します。グループによってはDocs上にアウトラインを作成するところもありました。

このやり方で共同ライティングを行うよい点は、ウェブブラウザで複数の学生が同時に利用できることに加え、ファイルが随時保存されるので保存や提出といった手間が不要なところ、さらに教員である僕自身も編集中のファイルを常時モニターできるところです。Zoomのブレイクアウトルームに入ることもできますが、入退室が手間ですし、複数の部屋に同時に入ることはできません(これは複数アカウントを使うことで回避できますが、そこまではしませんでした)。一方Google Docsのファイルについては、ブラウザで複数を同時に開くことができ、作文・編集の様子をリアルタイムでモニターすることができます。さらに必要があれば教員も指示やコメントを直接書き込むことができるため、適宜フィードバックを与えることも可能です。

評価とフィードバック

学生が作文をしている間にも必要があればフィードバックを与えますが、文章の内容や構成に注目してほしいのでこの段階では文法や語彙についてはあまり触れませんでした。そこで、課題提出(実際にはブラウザを閉じるだけなので「提出」というステップはありませんが)後に全体的なフィードバックを行いました。

個別のライティング課題については、iPadのGoogle Classroomアプリを利用すれば、Apple Pencilを使ってアプリ内で個々の作文に直接手書きで添削し、それをPDF形式で返却することができます。しかし、上で説明した共同ライティングのやり方ではそれができません。そこで、提出された作文をそれぞれPDFファイルに保存して、それをiPadで開いて添削する方法を採りました。添削には以前よりPDF Expertというアプリを利用していますが、他のアプリでもかまいません。

添削したPDFファイルはすべてをまとめてひとつのファイルにしてClassroomにアップロードしました。そうすることで学生たちは自分たちの書いた作文だけでなく、他のグループが書いたものとそれに対する教員のフィードバックを見ることができます。ただし成績(グループごとにA, B,Cをつけます)については公開せず、PDFに書き込まずに個別に返しました。

以上です。ここまでの方法は、Google Classroomを使わなくてもGoogle Docsだけで実現可能です。編集可能なファイルを複数用意して、それぞれのファイルのアクセス情報(URL)を各グループに伝えればOKです。

今回の内容は、Google ClassroomやGoogle Docsを使ったことがない方にはピンとこないかもしれませんが、一度触っていただくとイメージがわくと思います。

オンライン授業について最低限共有しようと思っていたものはこれですべてです。他にも細々といろんな工夫をしてきましたが、そちらについてはうまくまとめられそうであればまた紹介します。