懐中時計用の革ケース購入

もう8年も前になりますが、とても古い懐中時計を入手しました。Illinois Watch Company の結構大振りなもので、今も正確に時を刻んでくれます。

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直径55mmもあるこのハンターケースは手にしてもずっしり重く、ズボンのポケットにちょっと忍ばせてという雰囲気ではありません。3ピースのスーツを着るときぐらいしか出番がなかったわけですが、アンティークとはいえこういうものは使ってなんぼと考えているので、何かいい方法はないかなと考えたわけです。

選択肢のひとつに、ズボンのベルトに通して使うタイプのケースがありました。ネットで検索したところそれほど見当たらず、その中でもこちらのケースが気になったので注文してみました。受注生産とのことで、注文してから到着するまで半月ほどかかりましたが、早速お披露目。(内側に若干シミがありますが気にしない。)

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写真ではわかりませんが、これかなり大きいです(実測で73mm x 90mmほど)。ただ、55mmのハンターケースを収納するにはこれでぴったり。

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裏側のベルト通し部分はこんな感じ。しっかり縫い付けられているので安心です。

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時計を傷つけないためにも、金具を使っていないケースを探していました。ちょっぴりゴツイ気もしますが、使い込むうちに革も馴染んでくることを期待しましょう。

というわけでこれから少し懐中時計の出番が増えるかもしれません。

MacとWordPressの組み合わせで不具合?

この記事はMac mini (Mavericks 10.9.4) 上のSafari 7.0.6で書いてます。WordPressは最新の3.9.2、プラグインはゴチャゴチャと13個動かしています。

こちらの投稿で、同じような環境なのにうまく投稿できないことがあると知ったのでためしにこの記事を書いています。なにしろ最近このブログを更新してなかったもので(苦笑)。

ここまでのところ特に不具合はなさそうです。投稿ボタンも押せそうです。

追記:

こちらのブログはA2hostingというアメリカのホスティングを利用しています。WordPressも英語版なので、他で管理している日本語版WordPressでも動作確認をしましたが、lolipopとwadaxという国内2つのサービスのホスティングで日本語版のWordPress 3.9.2での投稿を確認しましたが、問題なく記事の投稿ができました。

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GoodReader代替としてのPDF Expert

3年前にiPad 2を購入して以来、どこに行くにも持ち歩いているiPad。現在はiPad mini Retinaを愛用していますが、論文や本を読むのが主要な用途です。 自炊本も含めたPDFの書籍はi文庫HDを使っていますが、研究のために読む論文は、ハイライトしたりメモ書きをしたした内容をクラウドで同期する必要があるので、同期と書き込みの両方ができるGoodReaderをずっと使ってきました。インターフェイスがちょっと使いにくかったり、Retina対応が遅れたりと細かい不満はあれこれあったのですが、他にこれを上回るアプリが見当たらなかったので今日まで3年間使い続けてきました。それもいよいよ今日で終わりになるかもしれません。 GoodReaderの代わりになりそうなのがこれから紹介するPDF Expert 5。1,000円とちょっとお高いですが、結論からいうと僕のこれまでの使い方ならGoodReaderでやってきたことがすべて実現できて、しかもこちらの方が使いやすそうです。ということで(僕の使いそうな)主な機能を紹介します。

クラウドで同期させる

僕の場合クラウド(Box.com)を利用して複数のコンピュータとタブレット間でPDFを同期させていますが、Dropbpoxなどの主要なサービスの設定はすぐにできるようになっています(iCloudでの同期も可能です)。同期するフォルダの中身はiPadにダウンロードされ、注釈などをつてファイルが更新されるとそれも自動的に同期されます。

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PDFを読む

ダウンロードしたファイルは、フォルダ構造も含めてわかりやすく表示されるので、読みたいファイルをタップすればすぐに開けます。

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論文を読むときに便利そうなのがvertical scroll。ページをペラッとめくるのではなく、1つのページの下に次のページの上が表示されるのでスムーズに読み続けられます。その他に背景色を白、セピア、黒と選べるのが電子書籍リーダーっぽいですね。

PDF Expert

PDF Expert

注釈をつける

PDFに書き込みするには、左側に表示されたメニューからハイライト、下線、テキスト入力などのアイコンを選択し、書き込みしたい場所をタップするだけです。このメニューは上の鉛筆ボタンで表示・非表示を選択できます。

PDF Expert

PDF Expert

まとめ

注釈をつける機能についてはGoodReaderよりわかりやすく使い勝手もよいです。同期についてもアプリが開いていれば自動的にやってくれるようなので、(iCloud以外のサービスを使うなら)同期ボタンを押す必要のあるGoodReaderよりユーザーフレンドリーです。 まだ使い始めて1時間も経っていませんが、早速GoodReaderからの乗り換えを決めました。安いアプリではありませんが、PDFを読むのが僕にとって一番利用頻度の高い用途なので、GoodReaderで感じていたちょっとしたストレスが解消されればとてもうれしいです。

WordPress 3.9 で挿入画像のリサイズが簡単に

WordPress 3.9 が登場し、挿入した画像のをエディタで直接ドラッグすることでリサイズできるようになりました。これはこれで便利なのですが、WordPress の画像(メディア)挿入には元々リサイズして表示する機能もついています。

メディア挿入機能を利用して画像をアップロードすると、挿入時に以下の様な選択肢があります。Full Size 以外を選択すると、WordPress で縮小した別画像を用意して、そちらが表示されます。

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挿入後の画像をエディタ上でドラッグすることで自由に拡大・縮小できるようになったのが WordPress の新機能ですが、挿入時に縮小した画像をドラッグで拡大すると画像が粗くなるのでご注意ください。 フルサイズを選択するか、実際に表示しようと思うよりも大きいサイズを設定してからエディタ上で縮小するとよさそうです。

以下、同じ画像を3種類のサイズで挿入し、だいたい同じぐらいになるようにドラッグでサイズを調整したものをお見せします。一番上の拡大したものだけ画像がきたないことがおわかりいただけると思います。 フルサイズを使うのが一番よいかもしれませんが、元画像があまりに大きいとそれだけ読み込みに時間がかかるのでご注意ください。

300×100からの拡大
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640×215からの縮小
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フルサイズ(1229×413)からの縮小
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PPPについて

CELES静岡支部研究会でお話ししたことにも関連しますが、PPPについて僕が考えていることを整理します。コメントや反論歓迎です。

PPPとは

PPPとは外国語教育、特に文法指導のひとつの手法で、Presentation, Practice, Production の3つのステップで構成されます(頭文字をとってPPP)。多少の修正を加えたバージョンもいくつか提案されていますが、基本的な流れは次のとおりです。

1. Presentation

教えるべき文法規則の提示。提示方法もいろいろありますが、学習者が当該文法規則の明示的知識を身につけることを目指します。一番簡単な例は文法規則自体を直接説明することです。

2. Practice

教えたばかりの文法規則を使った練習をします。ドリルとか(文法)エクササイズが Practice の例です。

3. Production

練習した文法規則を実際に使う。インタビュー的なコミュニケーション活動やライティング的な活動など様々な可能性がありますが、1-2で習った文法規則を使うことが主目的であり、学習者も教師もそう認識しているのがポイントです。

冷たいのに過保護

PPP的指導の問題点はこれまであちこちて指摘されていますが、僕が特に重要だと考えているのは次の2点です。ただしこれはPPPそのものの問題点と言えるのか、それともPPPを実践する際の問題点になるのかは議論が分かれるかもしれません。

1. PPPは冷たい

PPP型のシラバスでは、1つの文法規則は通常1度しか扱いません。教科書で「新出」文法項目として扱われるように、初出時にのみ明示的に提示され(Presentation)、そのタイミングで Practice と Production が行われます。文法規則が活動の中で正しく使えたかどうかを評価してPPP型指導は一段落です。ちょっと極端な言い方をすると、「1回教えたらそれでおしまい」です。実際にはそんな冷たい先生はいないと思いますが(笑)、一度習った文法規則を後ほど振り返り、再度 Pratice や Production の機会を用意するというのはPPPの考え方には標準では備わっていません。

文法規則は、一度教わったり使ってみたりしてすぐに身につくものでないということは多くの方の共通認識だと思います。そのため、教科書をある程度進めたところでそれまでの既習文法規則の復習的な活動を組み込む教員も多いと思います。ただその場合でも Practice の段階を越えて Production 的な活動まで行うことはあまりないのではというのが僕の印象です(違っていたらご指摘ください)。そうすると1度習った文法規則を実際に使う練習は1回しか行われないということになります。

2. PPPは過保護

PPPでは、Production の段階で習った文法規則を実際に使う機会を提供して一連の活動を締めくくりますが、これでは不十分だと僕は考えます。学習者が教室の外で実際に英語を使う場面を想像してみましょう。留学生と世間話をする、旅行先で道をたずねる、取引先とメールのやりとりをするなど様々なシチュエーションが思い浮かびますが、その場で学習者がしなければならないのは、自分が何を言うか(書くか)を考え、それを英語で表現することです。当たり前のことですが、「こういう時はこういう文法規則を使うんだよ」と指示してくれ、場合によってはモデル文を示してくれる先生はその場にいません。どの表現を使うのか、どの文法規則を使うのが適切なのかを判断するのは学習者自身です。

純粋なPPP型指導では、学習者がどの文法規則を使うかをみずから選択するという機会が提供されません。もちろん、Production の活動で行ったのと同じような場面に実際の英語使用で遭遇すれば、そのときの記憶や知識が役に立つ可能性はありますが、そもそも Production は「この文法規則を使わせるにはどのような活動が考えられるか」という考え方で設定されるので、PPP型のシラバスをひと通り経験したとしても、学習者が遭遇する英語使用場面がある程度網羅されている保証はありません(し、シラバス作成時にそういうことを念頭にも置いていないと思います)。

ではどうする

PPPの「冷たく」て「過保護」な問題点の解決方法として僕が提案するのは、タスク型活動の部分的な導入(というか挿入)です。タスクについての解説や僕の考えの紹介は別の機会にゆずるとして、ここでいうタスク型の活動とは次のとおりです:

学習者にコミュニケーションの手段として英語を使わせる活動。ただしどのような表現を使うかは学習者自身が決め、教師は事前にモデル等を提示しない。

これだけです。なにも新しいことは言ってませんし、実際にこのような活動を取り入れている方もいるでしょう。僕の願いは、こういった活動が当たり前のものとして日常的に英語の授業で行われるようになることです。

なぜタスク型の活動がよいのか

上で説明したPPPの問題点に対するタスク型活動のメリットは次のとおりです。まず、タスク型の活動では学習者自身が使うべき表現を選択するので、このような活動を繰り返すことで教室外での実際の英語使用場面(ターゲットとなる文法規則やモデル文が提示されていない状況)において英語を使うための準備になります。タスク型の活動は、学習者がすでに持っている知識の中から適切なものを選び出す練習を行う機会を提供してくれるのです。

また、タスク型の活動を繰り返すことで、既習の文法規則をコミュニケーション活動の中で繰り返し使う機会を提供することにつながります。学習者は使うべき表現を自分で選択しなければならないため、過去に学習した文法規則についての知識を総動員することになります。

どう組み込むか

日本の英語教育は、大部分がいわゆる文法シラバスに基づいたカリキュラムで構成されており、PPP型の授業が中心を占めていると思われます。特に文法シラバスで作成された教科書の使用が求められる中学校ではPPP型の指導を行わないというのは難しいでしょう。そこで考えられるのが、PPP型とタスク中心の授業を組み合わせるハイブリッド型のコース展開(松村, 2012, p. 109)です。たとえば下図のように、教科書を用いたPPP型の文法中心の指導に一定の時間を充てたあとでしばらくはタスクに基づいたコミュニケーション中心の指導を行い、またPPP型の指導に戻り、その後タスク型の指導といったように2つの種類の指導方法を交互に実施するといった提案は十分実現可能だと思います。

交替型
(松村, 2012, p. 113)

参考文献

松村昌紀. (2012). 『タスクを活用した英語授業のデザイン』. 東京: 大修館. かなりオススメです。

中部地区英語教育学会静岡地区研究会

中部地区英語教育学会の静岡支部におじゃまして、以下のタイトルで1時間ほどお話しさせていただきます。

タスクを中心にした英語教育は日本で実現可能か—大学におけるライティング授業の事例—

今回の研究会は、中学校で教鞭をとる奥住桂さん(自己表現と和文英訳のあいだ—4コマ漫画で英作文のススメ—という題でお話ししてくれます)と一緒にライティングの授業について考えるというイベントで、最後には広島大学の前田啓明先生にもご参加いただき、フロアの皆さんを交えてのクロストーク・セッションも用意されています。

タスクを中心にした英語教育は日本で実現可能か—大学におけるライティング授業の事例—

MacのSafariでPDFのAdobe Readerでの表示をやめる

Mac に Adobe Reader をインストールすると、Safari で PDF を開いたとき自動的に Adobe Reader のプラグインで表示されるようになります。動作が重かったりと何かと不満があったので、少し調べてこのプラグインの使用を停止しました。

ネット上で少し検索しましたが、古いバージョンのものが多かったので、以下の Adobe 社の説明を参考に設定を行いました(実際にはフォルダ名が少し異なりましたが):

Acrobat Help / Display PDF in browser | Acrobat, Reader XI

注:

  1. 言語設定が英語になってますが、日本語も似たような感じだと思います。
  2. 管理者権限が必要です。そうでないアカウントでログインしている場合にはログインしなおしてください。
  3. Safari は終了しておいてください。

1. Library フォルダを開く

Go >> Go to Folder… を選択するとフォルダ選択のウィンドウが開くので、 “/Library” と入力。

Go to Folder...Library

2. Internet Plug-Ins フォルダを開く

Library フォルダ内にあるこのフォルダを開きます。

Internet Plugins

3. 関連するプラグインを disabled フォルダに移動

次の2つのプラグインファイルを disabled フォルダに移動します。

  • AdobePDFViewer.plugin
  • AdobePDFViewerNPAPI.plugin

PluginsMoved

移動時に管理者パスワードが求められるので入力してください。また、移動ではなくコピーをしたあとで元のファイルを削除してもOKです。

以上です。Safari で PDF を開くと Preview.app のプラグインで表示されるようになると思います。

Moodle Moot 2014

2月19日–21日に沖縄国際大学で開催される Moodle Moot Japan 2014 に参加します。僕は、広島修道大学の大澤真也さん(akaパンダ教授)のチームの一員として、以下のタイトルで短い報告をする予定です。

 英語オーラル系授業の教室外活動でのPoodLLの利用

これまでに Moodle Moot や LET で教室外スピーキング活動について何度か発表してきましたが、今回もその流れです。僕は自分の授業で Moodle 上の NanoGong プラグインや Version2 さんの Glexa などを使ってきましたが、新年度からはあらたに PoodLL という Moodle プラグインの使用可能性を探ろうと思っています。Moot でも報告しますが、PoodLL は NanoGong と比べて機能的に優れており、最近のバージョンアップで NanoGong にあって PoodLL にない機能はゼロになったと言ってもよいと思っています。特に iOS 端末でもブラウザと連携して声の録音、ビデオの録画およびアップロードができるのはすばらしい。

英語オーラル系授業の教室外活動での PoodLLの利用 from Ken Urano

LMSシンポジウム@広島修道大学

広島修道大で開催されるイベントにおじゃまするため昨日広島に飛んできました。僕は午後以下のタイトルで25分程度お話しさせていただきます。

目的に応じたLMSプラットフォームの選択と利用: 何ができるかではなく何をすべきかを考える

シンポジウムの詳細は以下のページでご確認ください。

https://sites.google.com/site/shudolmssymposium/

目的に応じたLMSプラットフォームの選択と利用: 何ができるかではなく何をすべきかを考える from Ken Urano

自由産出課題は学習者の暗示的知識を(どの程度正確に)反映しているか

先日のメソ研 in 秋田で行われた、草薙邦広さん(名古屋大学)の討論会「第二言語能力の構成技能としてみる明示的・暗示的文法知識」に参加して考えたことを、これまでの自分の研究などに照らし合わせつつまとめます。論文ではなく思いつきのメモなので、引用など細かいところには目をつぶってください。

第二言語習得(SLA)研究では、黎明期より学習者の自発的産出データ(spontaneous production data)*の分析が行われ、言語学的な研究などでは今でもよく利用されます。ただし、産出データ(特に発話データ)は収集とコード化に多大な時間を必要とするため、こういったデータを扱った研究は小さなサンプルを対象とすることが多いです(例外として学習者コーパスを利用した研究がありますが、これについては後述)。

*タイトルは自由産出データ(free production data)としていますが、本記事では個人的に好きな自発的産出データを使います。

SLA 研究の発展とともに、産出データ以外にも様々なデータ収集方法が提案され、たとえば Rod Ellis や Nan Jiang のようにデータ収集(測定)方法に焦点をあてた研究も進んでいます。学習者の知識を直接測定することは不可能なため、間接的な手法からどこまで知識に迫れるかが課題になります。

第二言語学習者の知識を測定する上で避けて通れないのが、いわゆる明示的・暗示的知識の区別です。詳細は割愛しますが、最近の測定法研究の多くは、明示的知識の影響(干渉)をいかに排除して、学習者の暗示的知識に迫ることができるかを課題としています。Ellis は「時間制限つきの文法性判断テスト」、「模倣テスト」、「口頭物語テスト」が暗示的知識の測定に適していると提案していますが、たとえば時間制限つきの文法性判断テストにしても、明示的知識の干渉を抑えることは難しいと僕は考えています(詳しくはメソ研論集の浦野 草薙を参照)。

そこで考えられるのが、冒頭で述べた自発的産出データの利用です。Ellis 自身も “the ideal measure of implicit knowledge is probably ‘free production’” (Ellis et al., 2009, p. 28) と述べているように、一般的に産出データは明示的知識の影響が少ないと考えられています。ただ、話はそんなに単純ではないですよというのがこの記事の主旨であり、産出データに明示的知識がどのように干渉し得るか、その条件の整理を試みます。整理といっても網羅的なものではなく、僕が思いついた要因をいくつか書き記すだけですので、他にも要因がある可能性は十分あります。

1. モード

一般に話しことばよりも書きことばの方が明示的知識の干渉が多いと言えます。書きことばの方が時間をかける場合が多いし、その分産出前後に明示的知識を利用したモニター(修正)を行うことがあり得るからです。ただし、話しことばの方がデータ収集が大変で、しかも収集後に文字化する手間がかかるため避けられることが多いです(苦笑)。話しことばのデータを収集・分析するみなさん、おつかれさまです。

2. 時間あたりの産出量

書きことばのデータを集める際に明示的知識の干渉を減らす方法として、モニターをなるべくさせないことが考えられます。少々あらっぽでいすが、一番手っ取り早いのが時間あたりの産出量を増やすことです。たとえば、同じ300語を書かせるにしても、60分かけるのと10分でやってもらうのとではモニターに費やせる時間は大幅に変わってきます。学習者コーパスの多くは、時間あたりの産出量が少ないので、残念ながら統語や形態素に関する暗示的知識を推測するデータとしては不適切だろうというのが僕の考えです*。特にモニターしやすいような文法規則については、明示的知識によって産出された誤りの多くが修正されてしまっている可能性があるでしょう。もちろん学習者コーパスは文法の暗示的知識の測定を主目的として収集されているわけではないのですけど。

*たとえば NICE の場合、60分間の作文の平均語数は342語で、これは1分あたり5.7語のスピードで書いていることを意味します。実際に書くスピードはもっと速いはずなので、書く前や書いたあとに明示的知識などを動員していることが考えられます。

暗示的知識を調査するために産出データを用いるなら、短めの時間制限を設定して、時間内にできるだけたくさん書いてもらうことでモニターの機会を奪うことが必要でしょう。

3. 学習者の産出課題に対する意識

課題に取り組むにあたって、被験者が課題の目的をどう理解しているのかも明示的知識の干渉の有無(または大小)に影響を与えるでしょう。エッセイ形式の課題の場合、普段の授業で文法に関するフィードバック(添削)を受けている学習者であれば、文法的正確さにも意識を向けやすく、したがって明示的知識の使用が増えることが予想されます。また、実験環境で文法テストを受験したあとで産出課題を行えば、被験者は「これから書いたものは文法的な誤りをチェックされるのかな」と考えるかもしれません。

明示的知識の干渉を減らすには、形式よりも意味に焦点を当てるよううながしたり、正確さ(質)よりも流暢さ(量)を重視する旨を伝える必要があるでしょう。

以上3点をざっくりまとめると、「自発的産出データは話しことばが望ましいが、書きことばにする場合にも、限られた時間内にたくさん書かせることと、形式よりも意味に焦点を向けさせることが望ましい」ということになるでしょうか。絶対的なガイドラインとは言えないかもしれませんが、少なくともこのようなことに気を配らずに集めた産出データは、暗示的知識を測定する方法として適切でないとは言えると思います。

上記の提案は、実証的な根拠のない、いわば浦野の思いつき(一応経験には基づいていますが…)です。研究上のガイドラインとするには心細いので、なんらかのサポートを用意する必要があります。一番確実なのは、上記3つの要因を部分的に統制した形で産出データを集め、誤用率を計算することで明示的知識の干渉の程度を測定することです。たとえば、まったく同じライティング課題を用意して、ひとつのグループには制限時間を60分与え、もうひとつのグループには(たとえば)その半分の30分という短い制限時間を用意してみてはどうでしょう。また、制限時間も揃えた同じライティング課題で、片方のグループには質より量を重視する旨の指示を出し、もう片方には特に指示を与えなかった場合の誤用率の比較も可能です。明示的知識の干渉が少なくなれば、それだけ誤用率が上がる(つまり誤りが増える)ことが予想されます。

誤用率を計算する(つまり測定する)文法規則の選定も重要になります。学習者が明示的知識を持っていて、モニターの形でそれが使いやすく、なおかつその規則に関する暗示的知識を持っていない(と思われる)ことが望ましいです。産出データ中にある程度の頻度で観察されなければいけないことも踏まえて、主語と動詞の一致(agreement)、動詞の過去形、名詞の複数形といった形態素使用の正確さを測定することをここでは提案しておきます。

最後にひとつコメントです。忘れてはならないのは、(特に書きことばの)産出データを分析する場合、ある言語規則の誤用率が100%になることはほぼないということです。ある言語規則について、もし学習者が暗示的知識を持っていないとすると、暗示的知識のみを利用した産出データでは理論上誤用率が100%になるはずです。たとえば、日本語を母語とする英語学習者は agreement に関する暗示的知識を持っていない可能性が指摘されていますが、産出データで agreement の誤用率が100%近い数値を出した研究は僕の知る限りありません。これはつまり、どれほど統制を加えても、学習者が英語を書いたり話したりするときには明示的知識が複雑な形で暗示的知識(に基づく産出)に絡み合っている可能性を示唆し、そういう意味で明示的知識の干渉を産出データにおいて完全に排除することはほぼ不可能であることも意味します。この辺については、冒頭で紹介したメソ研討論会での草薙さんの発表内容ともつながります(興味のある方はUstreamでご覧ください)。


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