メソ研 in 秋田

外国語教育メディア学会(LET)関西支部メソドロジー研究部会(通称メソ研)の2013年度第2回研究会が10月26–27日に大学コンソーシアムあきた(秋田市)で開催されます。

26日の17:00–17:55に、静岡大学の亘理陽一さんと共同で以下のタイトルで発表を行う予定です:

「英語教育研究における追試(replication)の必要性 」

発表の補足を亘理さんがブログでまとめてくれています。

教育方法学でつっぱる: [研究][SLA] ケンカの後始末,またはSpada & Tomita (2010)について。 

亘理さんによるあらたなブログ記事も関係してますね。

[研究][ノート] 補足の補足でメタ分析について覚え書き(山田・井上(編), 2012. Ch.2)

わたくし浦野も Twitter 上で少し補足をしました。

メソ研補足

発表資料

Ustream(録画)

大会プログラム

それではみなさん、秋田でお会いしましょう!

LET関西支部2013年度秋季研究大会

10月12日に関西大学で開催される外国語教育メディア学会(LET)関西支部の秋季研究大会で、以下のタイトルで実践報告を行います:

大学の英語ライティング授業における TBLT の導入

発表資料:

大学の英語ライティング授業における TBLTの導入 [PDF]

大学の英語ライティング授業における TBLTの導入 [Keynote]*

*Myriad Pro フォントを利用しているため、このフォントをインストールした Mac 以外ではレイアウトが乱れる可能性が高いです。

大学の英語ライティング授業における TBLTの導入 [mov形式動画]**

**Myriad Pro フォントのない環境でマジックムーブの様子を見たい方はこちらをどうぞ。5秒おきにスライドが自動で進みます。ファイルサイズが 85MB 近くあるので注意してください。

LET関西ウェブサイトでプログラムおよび要項集が公開されています(いずれもPDF)。

関西大学でみなさんにお会いするのを楽しみにしています。

J-SLA2013 Workshop

8月20–22日に八王子セミナーハウスで開催される日本第二言語習得学会(J-SLA)2013年度夏季セミナーで、次の2つのワークショップを担当します(両方とも20日の午後を予定):

  1. 推測統計についてしっかり考える[有意性と効果量のはなし]
  2. Rを一緒に使ってみよう

このページでは、ワークショップのスライドや配布資料を公開します。完成次第随時アップロードする予定です。

1. 推測統計についてしっかり考える[有意性と効果量のはなし]

LET全国大会でのワークショップ「有意性と効果量についてしっかり考えてみよう」とほぼ同内容です。

参考文献一覧は、LET全国大会でのワークショップのページをご参照ください。

2. Rを一緒に使ってみよう

実際にRに触りながら、基本的な使い方、特にデータの読み込みと基本的な統計処理(作図、記述統計、簡単な推測統計)ができるようになることを目指します。

JASELE2013 Workshop

このページは、全国英語教育学会(JASELE)第39回北海道研究大会で行われたワークショップ「英語教育実践と研究の接点―研究の在り方と手法―」(担当:浦野研・水本篤)に関係する資料の保管・公開場所です。

要旨

全国英語教育学会には、学部生や大学院に入って間もない研究者のタマゴや、中高等で実践にあたる英語教員のみなさんの参加も多く、大会参加後に自分でも研究をやりたいと思う方もいらっしゃると思います。ただ、いざ研究を始めようと思ってもとっかかりが見つからず、何から手をつけてよいかわからない方もいることでしょう。

そこで本ワークショップでは、講師のふたりがこれまでに他学会等で行ってきた研究法に関するセミナーやワークショップの内容を基に、全国英語教育学会の年次大会や紀要(ARELE)で研究発表や論文投稿を行うための手がかりとなるお話をさせていただきます。具体的には、国内の英語教育系の学会でこれまでにどのような研究が行われてきたのか、そして行われてこなかったのかについて、研究内容(テーマ)と研究方法の両面から考察し、「こんな研究をやってみたらどうでしょう」といった提案をすることを目指します。

Ustream 動画(前半は映像がぼやけています。スライドとあわせてご利用ください。)

Slideshare

LET2013 workshop

(2016年8月追記)2016年に同じLET全国研究大会で類似のテーマのワークショップを行いました。情報も追加していますし、誤りも修正していますので、そちらをご利用ください。

LET2016 ワークショップ

このページは、2013年度外国語教育メディア学会(LET)全国研究大会中に行われるワークショップ「有意性と効果量についてしっかり考えてみよう」に関係する資料の保管・公開場所です。

ワークショップ中も含めて、Twitter 等でのシェアを歓迎します。また、@uranoken までメンションを飛ばしていただければ、できる限りお返事します。

当日の Twitter でのつぶやきのまとめを作っていただきました。後半部分が浦野担当ワークショップ関連のつぶやきです。ワークショップ内容の補足としてご覧ください。

LET2013ワークショップつぶやきまとめ

スライド

効果量の計算のシート(Excelファイル。水本篤さん作成)—リンクが正しくなかったのを修正しました(2013.08.08)

参考文献(随時更新。書籍のリンク先はAmazonです。)

ワークショップ概要(大会ウェブサイト)より:

「効果量(effect size)」ということばを目にすることが多くなりました。統計ソフトの中には有意性検定(「p値」の計算)とセットで計算してくれるものもあり、有意確率(p値)とともに効果量を掲載する論文も増えてきましたが、それが何を意味するのかについて本文でまったく触れない論文もあり、だったらなぜ載せるのだと疑問に思うことがあります。

本ワークショップは、効果量とは何か、有意確率との類似点と相違点は何かなどを考えることで、効果量の意味を理解することを第一の目標とします。その理解に基づいて、表計算ソフトや無料のウェブサービスを利用して実際に効果量の計算ができるようになることも目指します。

Nation の “The Four Strands” の問題点

この記事は、nancarrow さんのブログ記事「Urano氏への返答」の回答として読まれることを念頭に置いて書いています。本来なら The Four Strands そのものについてもある程度解説した方がよいのですが、時間の関係でかなりはしょります。興味のある方は、Nation 自身の文献をお読みください。また、彼の最近の講演を聞いたことのある方は、だいたいこれと同じ話をしていると思います(僕も先日直接話を聞く機会がありました)。

以下の文献は英文ですが比較的短いです。

The four strands of a language course. (1996)
http://www.victoria.ac.nz/lals/about/staff/publications/paul-nation/1996-Four-strands.pdf

The four strands. (2007)
http://www.victoria.ac.nz/lals/about/staff/publications/paul-nation/2007-Four-strands.pdf

おことわり

最初に宣言しますが、僕は The Four Strands そのものに異議を唱えるつもりはありません。偏った教え方をしてはいけませんよというメッセージは納得できるものですし、外国語を教える際のおおまかな道しるべとしては意味のあるものだと思います。ただし、Nation の提案の一部には SLA 研究の成果とは結びつかないところもあり、SLA(や関連分野)の研究に基づく提案であるとは言えないことを指摘します。

次に、この投稿では Nation の提案が「科学的か否か」という問題には踏み込みません。何をもって「科学的」とするかはなかなか難しい問題で、科学哲学的に考えてとても重要なことではありますが、今回の議論の中心からは外れます。そこでこの記事では、「科学的」ということばは使わず、Nation の提案が「これまでの研究に基づいているといえるかどうか」と読み替えて話を進めます。参考までに、科学哲学については、以下の本が読みやすいかもしれません:

戸山田和久 (2005). 『科学哲学の冒険: サイエンスの目的と方法をさぐる』

僕の中では Nation は語彙習得の権威で、今までもその方向の文献は追ってきましたが、今回の The Four Strands については僕の守備範囲からは少し外れますし、上で紹介した文献も丁寧に読んだわけではありません。僕自身の理解にも誤りがあるかもしれませんので、その場合ご指摘いただければうれしいです。

The Four Strands

Nation は外国語授業の活動を次の4つに分類しています。

(1) meaning-focused input
(2) meaning-focused output
(3) language-focused learning
(4) fluency development

(1) と (2) がいわゆる意味重視の活動で、言語形式には(あまり?)意識を傾けず、インプットの内容を聞いたり読んだりして理解する活動と、自分のいいたいことを書いたり話したりして伝える活動です。(3) は発音、語彙、文法などを意識的に学習する活動で、フラッシュカードを使った語彙学習や発音ドリルといったものが含まれます。(4) は既に知っている知識を駆使して英語を使う活動で、インプット・アウトプットの両方が含まれます。未習の言語項目が含まれていないことが重要で、速読や時間制限つきのライティング活動で、外国語を使うことに「慣れる」ことを目指します。

Nation は以上の4つを strands(糸)と表現し、下図のように4つの活動がバランスよく配合されることが重要だと述べています。

four-strands (Nation, 2013, chapter 1 より)

ここでいう「バランスよく」というのは、授業での活動時間がほぼ均等(25%ずつ)になることだと Nation は主張しています。

Each strand should have roughly the same amount of time in a well balanced course that aims to cover both receptive and productive skills…. Ideally each strand should occupy about 25% of the course time. (Nation, 2007, p. 7)

“25%” には根拠がない

僕が言いたいのは、上述の4つの活動時間を 25% ずつに配分するという考えには研究に基づく根拠がないということです。Nation 自身も、”… giving equal time to each strand is an arbitrary decision. (p. 8)” と根拠がないことを認めているのですが、それでも結局は “25%” にこだわりを見せていますし、最近出版された What should every EFL teacher know(Nation, 2013)でも “Each of these strands should get an equal amount of time in the total course” と主張しています。

この点についていくつか反論があるのですが、長くなるのでひとつに絞ります。僕は、インプットとアウトプットにかける時間が同じ(それぞれ 25% ずつ)であるべきという点にものすごい違和感を覚えます。Nation は meaning-focused output を支持する主な研究として Swain のアウトプット仮説を用いていますが、アウトプット仮説が生まれた経緯を考えれば、インプットとアウトプットを同じ量にするのがよいという考えがおかしいとすぐにわかるはずです。Swain (1985) によれば、カナダのイマージョン教育でインプット重視(アウトプットが強制されることはほぼない)の環境で第二言語を身につける学習者は、母語話者と比べて文法的正確さのみ劣ることがわかりました。意味理解、流暢さ、社会言語学的能力等については母語話者と同等の能力が身につくのに文法的正確さだけが身につかない理由として、イマージョンではアウトプットを促される機会がなかったため、細かい文法的規則に意識が向かなかったからだと Swain は考え、これがアウトプット仮説の根幹となりました。

上述のように、アウトプット仮説も実はインプットを重視しています(イマージョン教育が出発点ですから当然ですね)。インプットだけでは足りない部分を補うためにアウトプットが役立つと理解するのがちょうどよいでしょう。こう考えれば、インプットとアウトプットの活動に割く時間を同じぐらいにするという Nation の主張は、研究に基づく根拠がないだけでなく、研究に基づいてできそうな提案(インプット重視でプラスαとしてアウトプットの機会も用意する)とも矛盾しそうです。

インプット重視という考えはアウトプット仮説だけのものではありません。インタラクション仮説(Long, 1996 など)もインプットが十分あることが大前提ですし、これまでの SLA 研究全体をまとめても、第二言語習得にはインプット(の理解)が最も重要な役割を果たすと理解してよいのではないかと考えています。

SLA の研究成果に基づいた提案であるならば、The Four Strands のバランスは少なくとも (1) meaning-focused input を他の3つ、特に (2) meaning-focused output よりもずっと重くする必要があるでしょう。インプットとアウトプットの活動に割く授業時間は同程度でいいですよとする Nation の提案は、この点でこれまでの SLA 研究の結果に基づくとは言えず、「SLA 研究では、インプットとアウトプットの量は同じぐらいが適切だということがわかっているんだ」という誤った考えが広まることを心配しています。

おわりに

日本の英語教育では、インプット量が絶対的に不足していることが繰り返し指摘されています。だからこそ僕は機会があるたびにインプットの量を増やす必要性を訴え、理解可能なインプットをどうやったら教師が提供できるかについても考えてきましたし、提案もしてきました。そんな中で Nation のこの提案を知り、少なくともこの “25%” という割合が研究に基づくものだと誤解されることだけは避けたいなと思っています。

Nation の提案の大枠自体は、たとえば「文法ドリルばっかりやっていないで、意味重視のインプットやアウトプット活動も授業でやってくださいね」とか、「インプットだけでは不十分なので、アウトプット活動も織り交ぜてくださいね」といったガイドラインとしては有効だと思います。少なくとも「4つの活動を 25% ずつやるのが望ましい」という部分だけは外してくれればと願っています。

MacR のインストールから最初の起動

4月10日追記。開発者の今尾さんご自身が MacR のダウンロードサイトを用意してくださったので、そちらのリンクを紹介します。インストール方法等の説明はありませんので当ブログエントリーは残しておきますが、ファイル自体はこちらからダウンロードしてください。

MacR ダウンロードサイト https://sites.google.com/site/casualmacr/

2月23日のLET関西支部メソドロジー研究部会で正式に発表された MacR は、オープンソースの統計解析ソフト R に GUI を装備し、ドラッグ・アンド・ドロップなどを使いながら直感的に統計処理を行うことを目指した Mac OS X 専用のアプリケーションです。 製作者の今尾康裕さん(大阪大学)による正式なサイトが未完成で、マニュアルやチュートリアル的なものも未整備なため、とりあえずインストールをして使えるようになるまでの手順をこちらで紹介します。

  1. R をインストールする。MacR は R がインストールされた状態でしか使えないので、まずは http://www.r-project.org/ に行って R の最新版をインストールします。この記事を執筆している時点での最新版は 2.15.2 でした。R のインストールについては青木繁伸先生(群馬大学)のサイト(http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/R/begin.html)も参考になります。 R Project website
  2. ダウンロードしたファイル(R-2.15.2.pkg)をダブルクリックすると R のインストールが始まるので、指示に従ってください。
    Screen Shot 2013-02-25 at 3.32.52 PM
  3. 次に MacR をダウンロードします。http://bit.ly/TIiGzsに行き、「ここをクリック」をクリックすると MacRのダウンロードサイトに行き、Download ページで MacR beta をクリックすると MacR.dmg のダウンロードが始まります。
    Screen Shot 2013-04-10 at 1.02.05 AM
  4. ダウンロードした MacR.dmg をダブルクリックすると、解凍後フォルダが開きます。MacR(アプリケーション本体)を Applications/アプリケーションフォルダに移動してください。他のフォルダに移動しても動作しないので注意してください。スクリーンショットのように Applications/アプリケーションフォルダにコピーするためのエイリアスも同梱されました。
    Screen Shot 2013-02-25 at 3.33.16 PM
    Screen Shot 2013-04-10 at 1.05.38 AM
  5. MacR を起動すると初回に必要な R のライブラリのインストールが自動的に行われます。
  6. MacR で現在できる分析はこちらのスクリーンショットを参考にしてください。 MacR Stats Menu on Twitpic

以上です。MacR にはまだマニュアルがありませんが、Mac らしい使用感を念頭に作られているので、SPSS などの GUI ベースの統計解析ソフトを使ったことがある Mac ユーザならある程度スムーズに使えると思います。 MacRは OS 10.8 と R 2.15.2 で開発されていますが、OS 10.7 でも動くはずとのことです。それより古い OS だと動きませんのでご注意を。 公開されたといはいえ MacR はまだまだ開発中のソフトですから、不具合などの問題があることを前提に使う必要はありますが、不具合を発見したり、「ここはこうなっていると便利」といったコメントがあれば製作者の今尾さんに情報提供すると、修正版を用意してもらえるかもしれません。 今尾さんへの連絡先はこちらのページでご確認を。Twitter をご利用の方は @casualconc 宛でも大丈夫だと思います。 取り急ぎ書いたので情報不足な印象もあると思いますが、まずは使いはじめるところまでのステップをお伝えするため投稿します。

関連情報:

更新情報

  • 4月10日にダウンロードサイトについての情報を加えました。

研究会のお知らせ

11月17日(土)に信州大学教育学部で研究法に注目した研究会を開催します。参加費は無料で事前申し込みも不要です。多くの方のご来場をお待ちしています。公開できる配布資料を随時アップロードします。

当日のTwitterでのつぶやきは、Togetter で確認できます

大会プログラム(PDF)

中部地区英語教育学会・長野地区2012年度第2回研究会

テーマ :「英語教師にとっての探究法―研究と実践―」

日 時: 2012 年 11 月 17 日(土) 9:00 ~ 17:00

会 場: 信州大学教育学部館 W 館 506 号室

主なプログラム:

  • 午前の部
    • 「出張」研究法セミナー
      • 「統計処理」の意味(浦野研). 配布資料.
      • 「単一事例実験計画の方法とその実際」(内田健太郎).
      • 「調査研究の方法とその実際」(本田勝久). 配布資料.
      • 「質的研究の方法とその実際」(髙木亜希子). 配布資料.
      • 「探究的実践の方法」(酒井英樹). 配布資料.
  • 午後の部
    • 特別セミナー「Journal 編集の立場から」(酒井英樹・浦野研). 配布資料.
    • 基調講演「英語教師にとっての探求法」(亘理陽一). 配布資料.
    • パネルディスカッション「教育と研究の接点: Action Research と Exploratory Practice の可能性」(酒井英樹・髙木亜希子・本田勝久・亘理陽一・浦野研).

研究と実践のはざまで:英語教育研究者のジレンマ

(2012.03.15. 21:45 追記)このエントリーに出てくる HELES の講演資料はこちらをご覧ください。

久しぶりの投稿です。このエントリは半年ほど前に途中まで書いたものに、最近になって手を加えたものです。もう何年もの間悩み続けていることですし、HELESの講演でもこの件で少しだけコメントさせてもらったので、補足の意味も込めて自分の考えというか立場を表明しておこうと思い書きました。

昨年10月1日に開催された北海道英語教育学会(HELES)の年次大会で講演を依頼され、その準備をする中で僕が日頃抱えている悩み(というと大げさか)をあらためて直視せざるを得ない状況になり、考えというか願いというか、頭の中でモヤモヤしているものを整理する意味も込めて書き綴ります。

僕の身分は大学教員なので、「研究者」としての自分の立場を意識し、論文を読んだり、時には実験やデータ収集を行ったり、その結果を学会で発表したり、論文にまとめたりもします。その一方で、大学教員の給料の主な出どころは学生さんたちの授業料なわけで、「教員」としての責任も感じながら日々働いています。実際自分の労働時間の多くは、授業とその準備、それに学内の種々の業務に費やされるため、「教員」としての仕事が「研究者」としての仕事よりかなり多くなってしまうことに多少の焦りも感じていますが、それは別のはなし。

さて本題です。HELESの講演では、「現場の先生方が多く参加されるので、実践的な話をお願いします」といった依頼を受けました。言わんとすることはよくわかりますが、実に悩ましいことでもあります。僕は一教員として日々英語教育の実践に励んでいますから、授業で取り入れているアクティビティや様々な工夫についていくらでも話すことはできますが、それはあくまで一教員としての自分の経験談であり、研究者としての話とは言えません。まして僕の主戦場は大学ですから、中学校や高校の英語の先生方とは教育実践の環境も制約も異なります。

そもそも僕が講演に呼ばれたのは、英語教員としての実践が評価されてのことではないわけで、そういう意味でも「研究者」としての立場でお話しさせていただくのが筋と言えます。そうすると話の抽象度は高くなり、「実践的」というより「理論的」な内容が中心になります。むしろ僕は、現場の教員の方々にこそ学会のような場所では抽象的で理論的な話を聞いていただきたいと考えているのでそれで全然構いませんが、聞いている方々に「実践的でない=役に立たない」話と考えられてしまうととても残念なので、どのような形でメッセージを送るかについてあれこれ考えました。

英語教育研究者の中には、率先して(小)中高の現場に入り、教育方法について具体的な提案をされる方も多く、それはそれで大切なことだと思います。ただちょっと気がかりなのは、そのような提案の多くが必ずしも「研究」(何をもって研究とするかという話はちょっと置いておきます)に基づいていないという点です。「正しい」提案が多いと信じたいですが、中には誤った提案だってあるでしょう。僕が問題だと思っているのは、研究に基づかない提案がたくさん出されている現状では、何が正しくて何が正しくないのかを簡単には区別できないということです。「わたしのウン十年の経験上これは正しい」と主張することは可能ですが、その根拠は言ってみればひとりの経験談に過ぎないわけです。研究者として発言するからには、その内容は当該研究分野においてある程度コンセンサスを得られた考えに基づいているべきですし、別な言い方をすれば、研究者の発言内容にはなんらかの根拠があることを示すことができないといけないと僕は考えています。現場に根ざした具体的な提案については、主に大学で働いている研究者がするよりも、現場での経験が豊富なベテラン教員にお願いした方が自然なわけで、研究者の発言は研究に基づいているからこそ価値があると思うのです。

英語教育研究という分野は残念ながらまだまだ未成熟で、わかっていることよりもわかっていないことの方が多いのもまた事実です。だからといって、これまで何十年かの間に積み重ねられてきた数多くの研究成果を半ば無視する形で、経験と直感のみを根拠に一人一人の研究者が異なる(そして時に互いに矛盾する)主張を行うのは好ましくないと考えています。英語教育研究者としての僕たちの役割は、これまでに行われた研究からわかっていることを、現場での先生方にわかりやすい形で伝えることで、それを具体的に現場にどう反映していくかについては、当事者である現場の先生方にある程度委ねるべきだと思います。そのためにも、僕たち英語教育研究者は相反する提案をすることが少なくなるよう努力しなければならないし、そういった矛盾のあるなしをある程度チェックするのが英語教育系学会の役割でもあると考えています。

このエントリーは、何を教えるかという教育内容論よりはどうやって教えるかという方法論を念頭に置いて書きました。多少刺激的な書き方をしてしまいましたが、特定の個人を批判するといった意図は全くありません。

新年のごあいさつ

上の画像は今年の年賀状(仕事用)ほぼそのままです。ネット上でお付き合いのある方の多くとは年賀状の交換をしていませんので、こちらにてごあいさつさせていただきます。ちなみに写真はハワイ島ヒロで2007年に撮影したものです。

2010年を振り返って

2009年度までは学内の委員会業務2つほどに時間的にも気分的にも振り回されていました。2010年度はその委員から外してもらえるということでほっと一息つける予定だったんですが、諸事情によりスタッフに欠員が生じ、1年間は授業以外の仕事を実質1.8人分ぐらいこなすことになってしまいました。予想外のことでしたし、正直言ってかなりしんどかったわけですが、それでも後任人事も無事に決まり、あと4月になれば少しずつ業務を引き継ぐことができるので、それまでの辛抱です。

研究活動の方は相変わらず不作で、しばらく彷徨っていた共著の論文1本と単著のもの1本が無事活字になったぐらいです。こんなことじゃいかんなぁ。

教育活動は、ここ何年かは同じ授業を担当しているので、2010年もこれまでのやり方をベースに、一部教材やアクティビティに手を加えてきました。その他には、twitter では何度かつぶやいていますが専門業者による英語コミュニケーション能力テストを色々試させていただきました。教育とは、本質的には何を教えたとかどんな活動を行ったかではなく、その結果学習者が何をできるようになったかが重要です。そこで、僕も含めて今うちの学部で行っている英語教育が、学生にどんな力をつけているのか、もしくはいないのかをきちんと測定することは、教育的にとても大切なことだと考えています。2010年には、特にスピーキングやライティングの能力を測定するテストを探すことに時間を割きました。僕の担当する授業には、たとえば半期15週かけてビジネス文書を作成する能力を身につけることを目標にするものがありますが、このような授業を受けた学生の実力をきちんと評価したいという気持ちが強いからです。

学外の活動としては、特に後期に入ってからは以前こちらで書いた学会関係の3つの仕事が本格化し、そちらにかなりの時間を割きました。お金にはなりませんし、自分の研究・教育業績に大きく貢献するものでもないと思いますが、誰かがやらなければならないことだし、誰かの役に立っているとも思いますので、今後もコツコツと励みたいと思います。

2011年に向けて

学内的には4月に新たなメンバーを仲間に迎えることになり、これをきっかけに色々新しいことに挑戦していけたらと思っています。主に教育活動になりますが、カリキュラムの再検討と、業者テストの新規採用も含めた評価体系の見直しを徐々に行っていく予定です。幸い4月に来ていただける方は English for Specific Purposes (ESP) のエキスパートなので、力を借りてがんばります。

委員会業務としては学部の某委員会の委員長を拝命する予定です。それほど忙しい仕事ではないはずですが、神経をすり減らすというか、ちょっと気を遣う仕事なので少々気が重いです。その他には大きな仕事は(今のところ)来ない予定です。

学外の活動としては、間もなく完成予定の中部地区英語教育学会40周年記念DVD-ROM制作の仕上げをまずがんばります。次に大きいのが日本第二言語習得学会(J-SLA)の年次大会の実行委員長の仕事。大会直前にどのぐらい忙しくなるのか見当もつきません。あとはすでに本格化している日本語学教育学会(JALT)の JALT Journal 日本語編集者としての仕事。これが思っていた以上に大変で、しばらくは振り回されることになりそうです。何しろ投稿されてくる論文をすべて査読するような気持ちで読む必要があるわけで、JALT Journal の一査読者だったころは年にせいぜい2, 3本の論文を見ていたのが、ここ3ヶ月でそのウン倍読みました。いやはや。

その他には、春から某全国学会の事務局長のお手伝いをさせていただくことになりそうです。こちらについてはまだ詳しいことは知らされていませんが、楽ではないですよね、きっと。

そんなこんなでどうしても後回しになりがちな研究活動ですが、やってみたい研究や分析が3つほどあります。時間をみつけてできるところから手をつけ、可能ならば結果をまとめて発表していきたいと考えています。あぁ時間が欲しい。もしくは共同研究者が欲しい。SLA で特に形態素の習得に興味のある方や、ICT 利用教育やライティング指導あたりに興味のある方で、一緒に研究してくれる方がいてくれるとほんとにありがたいんですが、そもそも近場に同業者がほとんどいないので、なかなかそれも難しい。

おかげさまで2人の娘も順調に成長し、週末や休日等はできるだけ家族サービスに時間を使いたいと考えています。ワーク・ライフ・バランスをどう取っていくか、これも2011年の課題になりそうです。

Twitter でブツブツ言うことに慣れてしまうとブログでまとまった文章を書くのがつい億劫になってしまいますし、読んでる方にとっても長文はめんどくさいかなぁとも思います。こんな僕ですが、今後とも変わらぬお付き合いのほどよろしくお願いします。